講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』



講演「食とライフスタイル」


1.友人との共食で子育て期を楽しく

1.はじめに
2.共食の実態とその作法
3.共食から得る喜び
4.質疑応答1:専業主婦の社会への窓口
5.質疑応答2:「孤食(個食)」に対峙した概念としての「共食」

2.食を介した家族のコミュニケーション

1.はじめに
2.子供が家事に興味を示す時期
3.アイランドカウンター周りで起きること
4.子供が参加しやすいキッチン10か条
5.家事参加の地域性など
6.質疑応答1:料理作りを見せること、共に料理をすること
7.質疑応答2:食の多面性

3.最後に

1.まとめ



1.友人との共食で子育て期を楽しく


 0.プロフィール


【松島 悦子】
お茶の水女子大学家政学部食物学科を卒業後、食品メーカーと流通で勤務。その後、米国居住を経て、1993年から東京ガス(株)都市生活研究所勤務。主幹研究員。消費生活アドバイザー。専門分野は、食生活、洗濯物の乾燥。
現在、家族社会学を学びながら研究に取り組んでいる。最近の主なレポート・論文は、『家庭における食事環境と中学生の幸福感』、『子育て期の母親が行なう友人との共食の実態と効果』、『50・60代の夫の料理と妻の意識』など。家族や友人との共食、男性の料理の促進をめざし、講演や執筆活動も行っている。
松島さん



 1.はじめに

本日は「友人との共食(キョウショク)で子育て期を楽しく」というテーマでお話させて頂きたいと思います。ここで言う「共食」とは、近所のお友達の家に行ったり来たりしてお茶や食事をすることを指していまして、外食は入っていません。話の内容は、2002年10月に行ったアンケート調査とその事前調査として行った10件のヒアリングに基づいています。アンケート対象は東京を中心とした首都圏在住の30代の子育て期の母親です。子供の年齢で言いますと、乳幼児から小学校6年生の子供がいるお母さん方になります。内訳は、保育園児が13.1%、幼稚園児が34.6%、小学生が54.6%、それ以外の未就学児が36.5%です。母親の平均年齢は35.6歳で、専業主婦が61.4%、フルタイマーが9.6%となっています。

例えば、34歳のこの方は3ヶ月の赤ちゃんと2歳の男の子がいます。大手企業の社宅にお住いです。その社宅はいわゆる2DKの間取りで、6畳ほどのダイニングキッチンでお話を伺いました。そこからは畳の部屋が丸見えでしたが、お友達との共食もそこで行っているそうです。その他にも、5人のお子さんがいる方、あるいは高級マンションにお住まいで、旦那様の仕事関係の方を呼ぶ共食も結構ある方など、様々な方が共食をされています。



本題に入る前に、アンケート調査結果から30代女性の子育て意識を紹介したいと思います。「自分は子育てを一生懸命している」と答えた方は66%で、75%は「子育てを楽しい」と感じていました。世論調査などでは、大変だという回答が高い割合になりますが、それは未婚女性の印象かもしれませんね。また、一番の関心が子育てと思っている方とそう思っていない方が半々くらいになります。

子育て期の母親のストレスについて聞いてみたところ、悩みがあると答えた人が43%です。心身のストレスの内容としては、肩こり、手あれ、たまった疲れ、いらいら、そして腰痛といったことが挙げられています。それらの解消方法ですが、断然トップが「友人と話す」でした。複数回答で7割の人が答えています。次いで、買い物、おいしいものを食べる、外出するなどが続きます。母親の希望を聞いてみますと、やはり「友人と大人同士で話をしたい」と思っている方が6割を占めます。「夫ともっと話をしたい」と思っている人はその半分程度になりますから、夫よりも友人と話をしたいと思っている人の方が多いようです。



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