講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


1.友人との共食で子育て期を楽しく

 5.質疑応答2:「孤食(個食)」に対峙した概念としての「共食」
西田:  いわゆるパーティーとは違うのですか?
鈴木:  関連する質問ですが、共食という言葉は確立しているのでしょうか?
松島:  アンケート上で共食という言葉は出していませんが、パーティーといった改まったものではなく日常に近い友人との集まりであると明記しました。食事会、集まり、ギャザリングという名称もあるようですが、やはり少し違うなと思って共食と呼ぶことにしました。
共食という言葉は、文化人類学や歴史学などでは使われてきたと思うのですが、近年使われているこの「共食」という言葉は、1980年頃から広まってきた「孤食(個食)」という一人で食事をする傾向に対比する概念として改めて注目され、よく使われるようになったと認識しています。1975年頃から組織や集団よりも個人を重視する考え方の個人化という傾向が強まり、家庭では様々な局面で家族が一人一人で行動する個別化の傾向が強くなってきました。孤食というのはそのような傾向の一つの現れです。数多くの実証研究から「孤食」が問題であることが指摘されました。共食の方が品数も多く、栄養バランスもよいですし、共食している家族の方が子供の心理面にも良い影響を与えるという調査結果も出ているようです。
鈴木:  家族だけでも共食と呼ぶのですか?
松島:  一般的には家族との食事を指していますが、文化人類学では誰かと食べることを共食と呼びますね。もっとも、友達との共食に関する研究はあまりされていませんが…。
松村:  子育て期の母親が共食をするというのは、昔から行われていたのでしょうか?
松島:  あったと思います。その仲間に入れない人達が孤立して問題となるということも起きていたように思います。
横江:  昔からタッパーウェアに食べ物を入れてきて、タッパーパーティみたいなことをやっていましたよね。
西田:  子供のいない専業主婦が参加することはないのでしょうか?
松島:  子供の年齢が一緒のお母さん方が同じような悩みを共有しようという目的で集まっている場合が多いと思います。
鈴木:  やはり近くに住んでいる必要はあるのでしょうね。電車で来るという感じではないですよね?
松島:  そうですね。基本的に歩いて子供を連れていける範囲という感じですね。まあ、自分の学生時代の友達は別でしょうけれど。
松村:  住宅のあり方とは関係なくて、広かろうとも狭かろうとも共食は行われているんですか?
松島:  冒頭に紹介した社宅の方などはそうした例になりますね。狭いけれども呼びたいのでしょう。共食をしている人はけっこうな頻度で行っていますが、共食をしていない人は全くしていません。後者の方のキッチンのタイプはダイニングキッチンの場合が多いですね。それから、旦那さんの親と同居している場合などもやらないことが多いようです。
松村:  ところで、共食をどう位置づけたらいいのでしょうか?人生のある一時期を楽しく過ごすためのものなのでしょうか?例えば中学に入った場合、子供はバラバラなりますよね。
松島:  確かに中学に入ったときに再編成されます。お母さん仲間も中学から再スタートという感じにはなりますね。
松村:  ちなみにこの研究は東京ガスではどの様な位置づけになるのですか?ガスとは関係がないように思えるのですが…。
松島:  20〜30代の女性達がお料理をしなくなったということが、この研究の発端だったんです。お料理をしてもらいたいということから共食の研究をしてみたら、こんなに面白いものであったというわけです(笑い)。



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