高齢者住宅に住む

スウェーデンのコレクティブハウスにおける
共食活動の運営と環境

東洋大学ライフデザイン学部人間環境デザイン学科教授 水村容子
 人口増の続くスウェーデンでは、ストックホルムなどの都市部において、住民が調理を協働し、共に食事する、共食活動(コモンミール)を特徴とするコレクティブハウスの供給が進められている。
 ストックホルムの多世代型及びシニア型コレクティブハウスの共食活動について調査を行った。共食活動など住宅運営の具体的内容は、それぞれの住宅で自分たちのニーズに即した方法がとられている。住民は、共食活動の意義・効果について、住民同士の結びつきや互いをよく知ること、孤独を払拭し他人との作業や食事中のおしゃべりを楽しめることなどをあげている。シニア型では住民としての責任を果たすことを意義・効果としてあげている。多世代型では単親の世帯が多い。親が食事当番で、子どもが傍でお手伝いしていることが、食育や社会教育という観点からも有効ではないかと考えている。
 コレクティブハウスの運営は住民が自主的に深く関わる。住宅内で何らかの役割を担い続けることが健康寿命を長くするポイントで、特にシニア型コレクティブハウスは“終の住処”になり得ると考えている。
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生活・ケアから住まいを考える

-介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅に期待すること-

近畿大学建築学部教授 山口健太郎
 高齢者の介護施設およびサービス付き高齢者向け住宅を、「生活とケア」の視点から改めて捉え直す必要がある。
 介護施設や高齢者住宅への移動は、すなわち「環境移行」であるが、危機的移行 (リロケーションショック) を回避する必要がある。そのためには、移行先の施設をなるべく自宅に近い環境にすること、もう一つには早めの住替えでショックを緩和するなどの方法があるが、高齢者の環境を変えることには最新の注意が必要である。
 近年、ケアの実践者から、グループホーム、ユニットケア、宅老所、富山型デイ、ホームホスピス等の新しい住まい方が提案されている。それぞれの試みのエッセンスを活かして、制度化することによってかえって形式的、疎外的な環境をつくることは避けなければならない。
 サ高住が直面する課題がまさしくそれであり、制度化により定型化・画一化と低水準化がかえって進んでいる現状は否めない。これからは、量ではなく質の充実をめざすこと、高齢者の自己決定と自立を尊重すること、人生最後の局面では死の受容と継承が鍵である。
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フィンランドの高齢者住宅・施設事例から見る日本のこれから
〜日・フィンでの居住者アンケート結果を交えて〜 <その1>

東北工業大学教授 石井敏
 フィンランドは北欧唯一の共和制の国であり、日本を、ロシアを挟んだ隣国と見なしており、親近感を持つ人も多い国である。人口は約550万人で、首都ヘルシンキの人口は60万人である。近年1千万人台に達したところである。いわゆる北欧型といわれる高福祉・高負担の社会保障を実現している。
 フィンランド人は個々人を独立した存在として捉え自らの意志に基づき行動し、その反面、人口が少ないこともあって協力を惜しまず、無駄な贅沢をしないことが身上となっている。また、スマートでシンプルな建築や物のデザインで有名である。
 高齢者のための住まいとしては、施設をなくし在宅で暮らし続けることを目指しており、24時間サポート付き高齢者住宅の整備を近年進めている。フィンランドでは、75歳以上をメインターゲットとして捉え、より高齢になっても暮らし続けられる住宅の整備を行う目標を立てている。
 高齢者向けの住宅は、「サービスハウス」といわれ、地域のサービスセンターと複合的に整備・供給されるのが一般的である。住戸面積40m²程度の一般的な住宅 (24時間サポート付き住宅) と住戸面積22〜25m²で共用部分が15m²/人程度付帯するグループホームの2種類がある。色を使ったデザインやIOT機器の利用も活発である。
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フィンランドの高齢者住宅・施設事例から見る日本のこれから
〜日・フィンでの居住者アンケート結果を交えて〜 <その2>

東北工業大学教授 石井敏
 日本とフィンランドの高齢者住宅に居住する人のアンケート調査から、両国間の違いや共通点が浮かびあがってくる。
 日本では、2011年の10カ所・230人と2015年に39カ所・600人の回答結果、フィンランドでは2011年の12カ所・150人の回答結果をもとに比較する。
 入居者の性別は、日本では男性が6割を占めるが、フィンランドは女性が8割である。平均年齢は81〜83歳で大きな違いはない。身体的な自立度は、両国ともに自立が6割弱であった。高齢者住宅への転居理由は、日本は心身の衰えが原因で家族が決定する場合が多いのに対し、フィンランドは不便さを解消するために時間をかけて準備し自らの意志で入居するケースが多い。そのため高齢者住宅の選定理由も両国では異なり、高齢者住宅での生活もフィンランドの方が活発で満足度が高い。
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「これからの高齢者住宅」−サ高住・住宅型有料・特定施設・GH
「小規模・地域密着・多機能」−原点は『宅老所』・在宅死

ジャーナリスト 浅川澄一
 地域包括ケアを実現するにあたって、多種多様な高齢者住宅のなかでもカギになるのは「拠点型サービス付き高齢者向け住宅(拠点型サ高住)」である。サ高住に訪問診療、訪問介護、小規模多機能、24時間訪問介護・看護の機能を併せ持ち、地域において自宅に代わるもう一つの最後まで生活することのできる住まいが「拠点型サ高住」である。<豊四季団地>(柏市)、<アクセスホーム庵>(大田区) の事例がある。
 一方、地域の空き住戸を活用しネットワークする「分散型サ高住」も興味深い取組である。URと(株)コミュニティネットが共同して高島平団地で<ゆいまーる高島平>を実現した。また、認知症対応に特化したサ高住も登場している。<ライフケアマンション神明>(名古屋市) は、サ高住と小規模多機能拠点を組み合わせて重度の認知症でも最後まで住まえる場を提供している。
 今後は、急激に高齢化の進む都市部で要介護の高齢者の住まいや施設が必要になってくる。その時には、<サ高住>と<小規模多機能>の併設がベストの解である。ビジネスホテルをコンバージョンした<ふくしの家>(佐賀市) やエステサロンをコンバージョンした<レリエフ二宮>(福井市) は興味深い事例である。また、地域住民が発意し住民主体でつくり上げ運営している<風の丘>(伊勢原市) もこれからの高齢者住宅のあり方を示す好事例である。
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「高齢者向け住宅の水回り等介助動作寸法に関する研究」より

近畿大学建築学部・アンチエイジングセンター教授 山口健太郎
 近畿大学山口研究室では、高齢者施設・高齢者住宅の「住戸内トイレの寸法」に関する研究を行っている。実際にトイレの実験空間をつくり、介護職員にとって介助のしやすいトレイの寸法を求めた。介助者の人数と車いすの位置によって適正な寸法は異なることがわかり、概ね間口1500mm×1400mmの広さがあれば便器への移乗介助が可能なことがわかった。さらに、現在は「住戸の間口幅に関する検討」を行っている。高齢者住宅の住戸プランは長方形よりも正方形に近い方が望ましいことがわかってきた。
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木材の新たな可能性 〜木の力再発見〜

住友林業株式会社
 住友林業株式会社は、近年、木造化・木質化を総称した「木化(MOCCA)」をキーワードに、世界有数の森林大国である日本の底力と付加価値を追求した木造化・木質化の推進と、木の良さの再認識と価値の創造を目指した取り組みを行っている。
 近年は、東日本大震災の復興支援において、木のカフェ「りくカフェ」(陸前高田市)や、宮城県東松山市での「木化都市」実現に向けた取り組みを行っている。
 また、有料老人ホーム、認知症グループホームやサービス付き高齢者向け住宅において、木化を取り入れることによって、気持ちが落ち着く、木の香りと温かみのある住空間を実現している。
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高齢者向け住宅に関する自立支援と
認知症高齢者の心身機能維持との関係性

パナホーム株式会社 エイジフリー事業推進部
 パナホームと大阪市大・三浦研究室が、パナホームが建設した15件の有料老人ホーム・サ高住・その他の高齢者居住施設を対象に共同研究を行った。
 要介護1〜3の高齢居住者本人の「<できている>と<している>の差」と「私物の持参量」「施設の違い」「併設施設」には有意差が認められた。
 私物の持参量は施設側の考え方、入浴の関連動作は入浴時間の選択と施設側の取組み、トイレ動作はトイレが居室内外の影響を受ける。食事の関連動作は食器類や家電の量・施設毎の対応・併設施設、洗濯の関連動作は洗濯機や物干しの有無、家事・掃除などは居室の広さや私物の持参量の影響を受ける。買い物は外出が自由かどうか、併設施設による影響を受ける。
 研究結果から、本人の能力と実施状況は、認知症や介護度等の心身状況との有意な相関はなく、それよりも、住宅のハード・ソフトの違いに大きな影響をうけることが明らかになった。今後の改善余地は大きい。
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「次世代型高齢者住宅」のご提案 carna五反田

医療法人社団青葉会・(株)マザアス
 (株)マザアス(ミサワホームグループ)は高齢者住宅の全国的な事業展開に20年以上携わった歩みを通して、次世代型の高齢者住宅を提案している。
 carna五反田は医療法人が運営する、医療施設と小規模多機能型居宅介護などの包括タイプの介護サービスが併設したサービス付き高齢者向け住宅を複合化したものである。
 当施設は「東京都医療・介護連携型サービス付き高齢者向け住宅モデル事業」の第12号に選定されており、住まいとケアの同一建物での提供を行っている。サービス付き高齢者向け住宅は、国交省補助と、東京都からの補助の両方(それぞれ100万円/戸)を受けて事業化している。
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