高齢者向け住宅に関する自立支援と
認知症高齢者の心身機能維持との関係性
(4) 研究のまとめ
本研究は以下のようにまとめられます。
[1] 本人の状況よりも、入居する住宅のハード・ソフトの違いに大きい影響を受ける。
⇒どの住宅を選ぶかで、入居後の生活の自立度がかわってしまう。
「できることをする」機会が異なってくる。
⇒個別ケアの重要性
[2] 認知症度や介護度と「能力と実施状況の差」に有意な相関なし。
⇒重度であれば「できること」は減るが
重度かどうかと「できることと と していることの差」は関連がない。
⇒ハードとソフトが整備されれば、重度の方も、その方らしい生活ができる。
[3] ハードが整備されていても、当初の目的に沿った活用がなされていない。
⇒ハードとソフトの両面からの工夫が重要。
⇒建築計画時に、生活の流れ、使い方を想定することが必要。
【質疑応答・意見交換】
Q:
施設により能力と実施状況の差の有意差が見られるとのことですが、施設の立地や、居室の広さ、サ高住か有料老人ホームかによる、傾向は見られたか?
A:
今回の研究では、調査対象施設が15件ということがあり、そこまでの結論を出せませんでした。サ高住と有料老人ホームは、同じ様な事業運営をしておられるところを選定しました。
Q:
調査対象の施設を、複数の事業者が運営しており、それが調査結果に影響を与えたということはないですか。
A:
調査対象の施設は、それぞれ異なる事業者により運営されているものでした。
C:
併設施設の無い施設において、自立している入居者が多いということはとても印象的で、我々が考えていることと合致しています。サ高住の併設施設は、サ高住とは別の事業者が運営し、地域の高齢者が利用できるようにすべきだと考えています。また、サ高住と有料老人ホームで同じ様な運営を行っているところを対象とされたとのことですが、自分はサ高住に住んでいる、あるいは有料老人ホームに住んでいるという意識の差が調査結果に影響しているかもしれません。
C:
IADL能力と実施状況の差と、認知症度、介護度に相関性が無いとのことですが、実は認知症度や介護度の軽度の人で、データの分散が大きいということがグラフから読み取られます。IADL能力のある人に対してこのような仕掛けがあれば、自分で実施するようになるかもしれないというヒントが、分散に着目したデータ分析から、得られるかもしれません。
C:
施設で食事サービスを受けるよりも、デリバリーサービスを利用している人の自立度が高いかもしれません。単に支援するサービスではなく、生活をつくるサービス援助が必要と考えられます。
以上
(Q:質問 A:回答 C:コメント)
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