吉原: |
吉原住宅は1965年に父が創業した貸しビル管理会社です。2008年からは、リノベーション事業を独立させた「スペースRデザイン」の代表も務めています。私は大学を卒業してから製薬会社で研究に携わっていましたが、2000年に家業を継ぐべく吉原住宅に入社しました。その時点で吉原住宅が保有していた建物は、築20年ほどが二つで、残りは築30年ほどと40年ほどが一つずつという状況でした。
問題だったのは、建物が古いことよりも、全く危機感のない経営が行われていたことでした。入社してすぐ事業収支を計算したところ、売上激減の過程にあり6年後には倒産の見通しでした。当時は、入居者がデリヘルをやったりホームレスの人たちが出入りする建物もあり、家賃の滞納総額が約2000万円に膨れ上がって、入居率もどんどん下がっていました。しかし、建替えると大きな借金を抱えることになり、新築物件と競合することにもなります。吉原住宅の貸しビルは、それぞれまちの景観を形づくってきた建物です。取り壊すと、コミュニティの核も壊してしまうように思えて、絶望的に事業継承の準備がないながらも、なんとかしなければと考えました。
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