講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


4. 山王マンションを巡るAリノベーション住戸
吉原:  私たちが手がける住戸は、1000人に1人くらいの需要があれば良いと考えています。望む人は少ないかもしれないけど、その人たちにはピタッとくる住戸を提供できるのが、古い建物ならでは魅力だと感じているからです。全国から入居者が集まるようになったのは、そのように腹を括ってリノベーションを進めてきたからだと思います。
入居者募集中の住戸を三つほどご案内したいと思います。407号室は山王Rプロジェクトの物件です。リノベーション後は家賃を2万円上げることができました。山王Rプロジェクトは、基本的にはスケルトンリノベーションです。間取りや内装・設備をそっくり変えて行きましたが、実はこの住戸は当初の名残が感じられるよう間仕切壁をあまり壊さずに活用しています。
309号室は2012年にリノベーションした住戸です。こちらのリノベーションは建築関係者以外の方に取り組んでもらおうと考え、ステンドグラス作家の女性にデザインを頼みました。ご自身が制作されたステンドグラスの効果もあって、他にはない部屋になったと思っています。
305号室は、福岡で建築設計をされている信濃さんが設計しました。信濃さんの設計事務所は、現在は「冷泉荘」に移りましたが、今年の4月まではここにありました。地袋などの和室の設えを活かしつつ、土間風の円形空間を移植した部屋になっています。
徳田(九州工業大学):  どの住戸も違う特徴を持っているので、入居者とのマッチングが必要ですよね。入居時に面接などをされているのですか。
吉原:  面接というより案内時に説明をしっかりするよう心がけています。もっとも、山王マンションに関心を持つ方は、部屋を選んでから来られます。マンション全体の説明ツアーを行ったりすると、参加者の興味が違うので住戸ごとに別の人から質問が出て、丸1日くらいかかったりします。
こういう取り組みをしているうちに、入居者さんが大きなパワーを持っていることに気付きました。これまでも、入居者さんがスペースRデザインに入社してきましたが、自ら事業を立ち上げてテナントスペースを借りる方も現れています。創業者の街である福岡らしい現象だと思いますが、コミュニティ物件だからこそ成り立っていると自負しています。



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