講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


5. 福岡県に広がる吉原住宅の取り組み
吉原:  吉原住宅やスペースRデザインの仕事は、久留米市や大牟田市などにも広がり始めています。例えば、久留米で50戸ほどの民間団地を購入しました。1000坪の敷地に古い集合住宅が3棟建っている「コーポ江戸屋敷」という団地ですが、前オーナーはもはや収益は上がらないと諦めており、安く購入できました。
団地は一つの街のようなものです。これまでの仕事を通して、1棟だけの取り組みに限界を感じるようになってきたので、新たな可能性が広がるものと期待しています。この団地では、空き住戸のリノベーションから着手しますが、具体的な取り組みは「半田ブラザーズ」にやってもらっています。
鈴木:  ちょっと確認させて下さい。半田ブラザーズというのはどういう方ですか。
吉原:  彼らは久留米で生まれ育った兄弟で、私たちの仲間です。兄が宅地建物取引業、弟が建築士の資格を持っています。賃貸経営改善を果たした大家業の2代目として、地元で家業を営んでいます。彼らは「久留米移住計画」という行政的な取り組みのリーダーなので、久留米ではちょっとした有名人です。久留米移住者には、この物件が優先的に紹介されることになるので、移住者が集まるコミュニティ団地という評判が程なく高まってくると思います。
これまでの経験から、私たちは活動しながら入居者需要を作っていけることが分かってきました。そこで、吉原住宅の投資によってリノベーションと移住者のリーシングを結びつけ、利回りを高めた運用実績を作ってから、久留米や大牟田のレトロ物件を全国の投資家に買ってもらうことを狙っています。古い建物のオーナーを説得してリノベーションするのは、すごく時間がかかります。それなら建物を買った方が安くて早いし、利回りが確保された建物なら、投資家が現れてしかるべきだという考えに至りました。新たなオーナーが現れたら、私たちが地元の若いやる気のある人たちを育てながら、彼らが新たな仕事としてしっかり管理していけばいいと思っています。
松村:  やる気のないオーナーをやる気のあるオーナーに変えるということですね。でも、久留米や大牟田には、本当に需要があるのでしょうか。
吉原:  天神から久留米まで電車で30分、大牟田には1時間で行けます。確かに、現在はどちらの駅周辺も空いている状況です。しかし、これからコンパクトシティに向かえば、市街地の中心にある駅周辺に人々が戻ってくるでしょう。ですから、駅周辺の建物のリーシングに取り組んで、このエリアに人を集めていきたいと考えています。そのためには1階店舗スペースの梃子入れが必要になるので、その手法に関する実験を私たちの持ちビルである「新高砂マンション」の1階で行っています。



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