講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』
山田貴宏さん・小林恵里奈さん「里山長屋暮らし−藤野プロジェクト」
山田貴宏さん 設計者・居住者
早稲田大学建築学科卒業。建設会社、設計事務所勤務を経てビオフォルム環境デザイン室を設立。里山長屋の設計者でもある。

小林恵里奈さん 居住者
藤野プロジェクトの企画者の一人。環境系の会社勤務を経て、現在は専業主婦として娘二人の子育て真っ最中。



1.パーマカルチャーと住宅設計
2.エコデザインのクライアント
3.藤野の町おこしとパーマカルチャー
4.里山長屋暮らしのコンセプト
5.居住者のライフスタイル
6.伝統的構法と現代的な環境制御
7.居住者インタビュー@藤野への移住
8.居住者インタビューA離れのようなコモンハウス
9.まとめ



1.パーマカルチャーと住宅設計
鈴木:  既に「里山長屋」は様々なメディアに取り上げられています。コーポラティブ方式によって建てたコ・ハウジング*でのエコライフという内容ですので、注目を集めるのも当然かと思います。山田さんは居住者であると同時に里山長屋の設計者です。まずはご自身のプロフィールと設計のベースにある「パーマカルチャー」の考え方からお話下さい。

* 共同施設を設けた集合住宅。コレクティブ・ハウジングに比べると生活の共同性は緩やかになる。
山田:  私は環境系研究室で大学院を修了してから清水建設に就職し、地域冷暖房など環境と関連する施設の設計に7年間携わっていました。でも自分の関心とのずれを感じるようになったんです。学生の頃から日本の風土に合った民家などに惹かれていましたが、そうしたスケールの設備設計になるとプラント設計になりますから。それで長谷川敬アトリエという設計事務所に転職してさらに6年間ほど実務を積み直しました。

長谷川さんはパオロ・ソレリのところにもいた方で、建築と環境について長年考えてこられた方です。当時は「東京の木で家を作る会」という地産地消の家づくりグループを立ち上げてまもない頃でした。そうした活動が知られたらしく、あるとき長谷川さんにパーマカルチャー・センター・ジャパンから講演の依頼があったんです。それについて行ったのがパーマカルチャーと具体的な関わりを持つようになったきっかけです。

「パーマカルチャー」というのはパーマネント・アグリカルチャー&カルチャーを縮めた造語で、生態系をベースにしたデザインの仕組みを人間の生活にフィードバックしようという考え方です。実はこの言葉自体は学生時代から知っていました。当時、環境と建築を融合させる試みを色々と紹介した『バイオシェルター』という本が出版されて、その中にパーマカルチャーも含まれていたんです。もっともその頃も知名度はそんなに高くなかったとは思います。



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