4家族によるコーポラティブ住宅での共同生活,地域活動の拠点としても利用される宿泊も可能な充実したコモンハウス,風呂・洗濯機・冷蔵庫等のシェア,学生の加わったワークショップによるセルフビルド,そしてもちろんパーマカルチャーに基づくデザイン。少し前ならそれぞれがインパクトある新しい提案・試みであることが,ここ里山長屋では無理なく総体的に実現している。
外観も内部のインテリアも,声高に主張するわけではなく,ナチュラルで居心地が良い。何よりもこの新しい形の器で,異なる家族構成の4世帯の現代的な生活が,ごくごく自然に営まれているのが印象深い。
また閉じられたコミュニティではなく,コモンハウスやブログによって開かれたコミュニティを志向していることも特徴的である。建設プロセスを紹介した里山長屋のブログは,多くの人の関心と共感を得て,投票による2010年のCANPANブログ大賞グランプリを受賞した。その後も専門雑誌だけでなく,一般誌やTVなど様々なメディアで度々とりあげられている。里山長屋という器と生活のあり方は,現代の住まい方の一つの選択肢として多くの人に共有・認識されつつあるのだろう。
里山長屋だけでなく,藤野という土地が,アーティストやエコロジーに関心を持つ人々が多く移住するエリアになっているということも今回初めて知って驚いた。パーマカルチャーというバックボーンを元に,着実に実践が展開されているのだ。10年ほど前,学生がエコビレッジの調査をした時には,理念あるいは技術が先行している事例が多い印象をもったが,明らかに時代は変わっている。
(鈴木毅)
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