講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


4.里山長屋暮らしのコンセプト
山田:  里山長屋のテーマはエコロジカルで健康的な生活とコミュニティです。パーマカルチャーのデザインは「里山」的風景と意訳できます。そこに昔ながらのご近所付き合いをイメージする「長屋」を加えてこうした名前が付けられました。各住戸の間取りはそれぞれ要望に応じていますが、床面積はどれも22〜24坪ほどです。さらに「コモンハウス」と呼ぶ25坪ほどの共同スペースが設けられています。ここには共有のキッチン、お風呂とゲストルームがあり、洗濯機は2台設置されています。このスペースは私たちの居間であると同時に、外部の活動とも連携していこう、ということに(後述:トランジションタウン運動やパーマカルチャーなど)なったので、アクセスし易い道路側に配置しました。実際、各世帯の客間を兼ねたようなスペースにもなっています。
鈴木:  利用状況はいかがですか?
山田:  住人同士が主催して、ヨガ教室や句会などをしたりしていますが、利用者は住人以外の方が多いでしょうね。例えば藤野では、多くの仲間が街を徐々にエコロジカルな住環境に移行していこうという「トランジション運動*」に取り組んでいて、そのミーティングが行われたりしています。藤野では数十人のメンバーが活動しています。その成果の一つが「萬(よろず)」という地域通貨です。現在、百数十世帯が参加していて、行政からも注目され始めています。

* ロブ・ホプキンスなどがイギリスのトットネスという町で始めたもの。エネルギー問題や環境問題は日々変わって行くので閉じたエコビレッジでは十分に対応できないという考え方に基づく。
http://www.transition-japan.net/

同じような流れで「藤野電力」というグループも立ち上がりました。そのグループのミーティングにも使われています。これは昨年の震災以降に始まった活動で、エネルギーを自前で作ろうという取り組みです。やはり数十名のメンバーがいます。活動はまだ細々としたものですが、太陽電池パネルの組み立てワークショップを毎月やっています。
西田:  コモンハウスの使い方に制約はないのですか?
山田:  4世帯の誰かが関わっている活動に限定しようというルールは決めています。公民館ではないですから(笑い)。友人関係にはコモンハウスに泊まってもらうことも多くあります。掃除は一週間交代で順番にやっていて、居住者のミーティングは月に一回程度です。こうした共有スペースはコ・ハウジングの例を引いて提案されましたが、みなさんもちゃんと勉強されていたので、ぜひ作ろうとすんなり合意形成できました。堅苦しいルールやルールブックはなく、問題が起きたら集まって話し合うというやり方で上手くいっています。



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