講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


2.コロニーガーデンの起源と変遷

コロニーガーデンの起源にはいくつかの流れが考えられますが、そのひとつは市民によって自然発生的に都市街壁の外に作られたキッチンガーデンあるいはホップガーデンなどと呼ばれる菜園で、17世紀にはすでにいくつか存在していました。もうひとつは現ドイツ北部のキール市から影響を受け、デンマークにも19世紀初めに設置されるようになった貧困世帯向け菜園です。これらは食料の生産を第一の目的とし、当局と個人の直接契約によって土地が貸し出されていました。

19世紀末から20世紀初頭にかけて、産業革命による都市部の急激な人口増加と劣悪な住宅環境を背景に、労働者たちによるコロニーガーデン運動が起こりました。現在コロニーガーデンは利用者によって形成されるガーデン協会によって自治的に運営されていますが、このような利用形態が定着したのはこの時期のことです。1908年には利用者たちの権利を守るため、ガーデン協会の上部組織としてデンマークコロニーガーデン連盟(Kolonihaveforbundet for Danmark)が設立され、コロニーガーデンは慈善事業として与えられるものから労働運動の結果勝ち取るものへと変わっていきました。またこの時期、コロニーガーデンでの野菜の栽培は引き続き行われていましたが、都会を離れて緑の中で休息することもまた大きな利用目的となりました。

第1次、第2次世界大戦中と戦後には、コロニーガーデンは食料生産の手段として重要な役割を果たし、その農園としての機能に再び注目が集まりました。特に第2次世界大戦後には多くのガーデンが開設され、その戸数は最大の100,000戸を数えました。

その後、労働条件が改善され休暇を取ることが一般的になり、さらに1日の労働時間が8時間に短縮されると、多くの人々は夏中、あるいは少なくとも子供の7週間の夏休みの間はコロニーガーデンに滞在するようになります。同時に新鮮な野菜は手軽に入手できるようになり、コロニーガーデンでの野菜栽培を重視する人は少なくなりました。また、都市の拡張に伴い閉鎖され、集合住宅等に用途変更されるガーデンも多くありました。



前ページへ  1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  次ページへ  


ライフスタイルとすまいTOP