郊外住宅地再生フォーラム2022
暮らしを豊かにするプロジェクトデザインとマネジメント
(4) 新百合ヶ丘地区における住まいと交通の意向調査について ((株)ミサワホーム総合研究所 石塚氏)
1) これまでの取組み
我々は新百合ヶ丘地区において、東京大学との共同研究に加えて、国土交通省「住まい環境整備モデル事業 (事業育成型)」として、丘陵地の住宅地における高齢者等の外出を促すエリアリノベーションをテーマに、オンデマンドバス交通を実証実験運転する小田急電鉄と共同して、運行地域の居住者への調査・分析を2020年に2回実施しました。
2022年には、新百合ヶ丘地区と他のミサワホーム郊外分譲地 (ヒルズガーデン牛久・プラムヒル松戸・ヒルズガーデンあざみ野) で居住者アンケートを実施し、新百合ヶ丘地区の特徴を明らかにする分析を行いました。本日はそのアンケート結果と新百合ヶ丘地区での3年間の活動を通した、これからの継続課題についてお話したいと思います。
2) アンケート結果
3地区の交通手段ですが、牛久では通勤・私事共に車、松戸では通勤は公共交通で私事は徒歩であることに対し、あざみ野では通勤・私事共に公共交通となっています。東京駅からの距離は牛久が53km、松戸が26kmで、あざみ野は28kmです。
アンケート回答者の年齢層は、あざみ野で9割近くが60歳以上と最も高齢化が進み、新百合ヶ丘では6割近くが60歳以上で4地区の中では高齢化が進んでいない状況です。築年数はあざみ野で9割近くが20年以上で、新百合では5割以上が20年未満と、4地区の中では新百合ヶ丘で築年数が最も低くなっています。
周辺環境の良いところについて、新百合、牛久、松戸で「交通の便」との回答が最も多くなっています。一方で周辺環境の悪いところについて4地区全部で「交通の便」との回答が最も多くなっています。そこで交通利便性に影響を与える要因について、『決定木』の手法で分析を行ったところ、丘陵地の新百合ヶ丘では「最寄り駅までの徒歩経路の高低差」が重要度の高い要因となっています。そして駅から離れた牛久では「最寄り駅までの徒歩所要時間」が重要度の高い要因となっています。駅徒歩圏ですが、駅まで高低差があり、高齢化の進んでいる松戸では「最寄り駅までの徒歩経路の高低差」が重要度の高い要因となっています。駅まで公共交通を使う方の多いあざみ野では、「最寄りバス停までの距離」が重要度の高い要因となっています。
玄関アプローチの改修工事については、丘陵地の新百合ヶ丘での関心が最も高くなっています。
今回のアンケートで分かったことしては、まず徒歩による移動の容易性がとても大事ということです。特に丘陵地の新百合ヶ丘では高低差による影響が大きいということが分かりました。その対策としては、地域全体を俯瞰して徒歩による移動がしやすい環境を整備することと、住宅個別ではアプローチや駐車スペースなどの改修が考えられます。これはエッジデザインと呼ばれますが、敷地条件 (高低差、面積、接道方向等) 整理と、改修工事の可否・規模別のエリア分けを行い、対策を具体的に進めることを考えています。
3) 継続検討項目
弊社ミサワホームは大規模な分譲住宅団地を持っておらず、周辺地域を含めたまちの持続性を検討することが大きなテーマです。これまで3年間の取組みを通して、これから継続する検討項目は次のものです。
①
エッジデザイン調査:敷地条件の整理、改修工事の可否・規模別エリア分けからエッジライプの分類を行い、分類による各タイプへの改修可能性スタディを行います。そして住まい環境モデル事業として、改修工事を実施します。
②
アクセシビリティ評価:具体的どのエリアでの商業施設などへのアクセシビリティが弱いのかなどを分析・評価します。
③
持続可能な住宅地の改修の整理とビジュアル化:①②を重ね合わせ、持続可能な住宅地のエリアを抽出して、改修手法整理とビジュアル化を行う予定です。
④
ストック事業、不動産事業、介護事業への落とし込み
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