郊外未来デザインに迫る:俯瞰と仰望


【質疑応答・意見交換】

WGメンバー:用途地域の課題についてですが、横浜市の場合、一低専では建物用途だけではなく、容積率60%、最低敷地面積165m²で縛られており、これが郊外再生のネックとして大きいと考えています。ハウスメーカーは容積率・敷地面積に対する柔軟な住宅デザインに長けておられますが、容積率・敷地面積の縛りについては、都市計画の分野で解く必要があるかと考えています。
小泉教授:ご指摘の点はその通りだと思います。横浜市都市計画審議会では用途地域見直し検討のワーキンググループをつくり、人口減少と住宅更新状況、老朽化、空き家発生状況を重ね合わせ、課題となっている地区の状況を確認し、用途地域の見直しで対応すべきところはどこかを、2年以上かけて検討しました。敷地面積についても議論して、最低敷地面積が持続可能な地域の支障になることも想定しうるということで、その場合は個別地区毎のある種のまちづくりのビジョンを検討した上で必要であれば規制緩和していくという方向になりました。一方で、我々も上郷ネオポリスで調査したのですが、敷地が大きいがゆえに新規の居住者が入っているという実態があります。空き家への新規入居には2パターンあって、200m²を超えるような敷地とミニ戸建てのどちらかでした。敷地が大きいことが地域のステータスになっていて、空き物件になると新規入居があるという状況が確認されています。住宅市場の中でどのくらいの敷地規模のものがどのような層に受け入れられるかをミクロに見ていくことが必要と考えています。
WGメンバー:郊外住宅地のエリアマネジメントについては、横浜の緑園都市では日本型HOAの事例があります。この方法がどれだけ汎用性があるかを検討することが重要かと考えています。
小泉教授:緑園都市は優れた都市デザインがなされ、日本型HOAについても、一つのモデルになりうると考えています。
吉田座長:住団連では税制や規制の見直しについての提言を行っており、その根拠となるデータの積み上げをしていきたいと考えています。
小泉教授:情報交換させていただき、ニーズを教えていただければ、我々も研究等でご協力することができると思います。
成熟研委員:郊外再生の論点につきまして、優先順位はなんだろうなと考えながらうかがっていました。我々は新規住宅地の開発に携わってまいりましたが、新しい分譲地では管理組合的な役割を担う組織をつくることはできると思います。しかしできあがってしまった分譲地ではなかなか難しい。②の資金獲得については周辺市街地を含めて、分譲地の中で種地を生み出すことが必要かと考えます。①と⑧についてはリーダーを生み出すことが必要で、その具体例があれば教えて下さい。
小泉教授:上郷ネオポリスやこま武蔵台では、居住者の組織が立ち上がっています。その中でリーダーシップのコーディネーションに難しい点が2つあります。1つはリーダーになられる方々がまちづくり組織を立ち上げても、それが色々な人が参加して自由に発意し、活動できるというオープンな組織体制になっていないところがあります。もう1つは自治会・町内会との関係です。東京特別区の既存市街地では自治会加入率が5割を切っているところも多いのですが、郊外住宅地では分譲と同時に自治会組織がつくられ、加入率が8割から9割と、とても高くなっています。自治会との関係がうまく行かなくなると、まちづくりをやりたい人のリーダーシップが発揮できにくくなるところがあります。地域の方々の思いをくみ取り、将来ビジョンや理想像を共に考えることは、我々も最初の段階のアンケートなどで実施していますが、一方で既存の組織との関係のデザインを、ご相談いただいている地域の方々や企業の方々と一緒に考えているところです。一番難しいところで、一番大事なところと考えています。
成熟研委員:我々ハウスメーカー側にとっては、いかにビジネス化するかが非常にハードルの高い所です。地域に入って一緒にまちづくりをやろうとしたときに、ビジネスが表立ってしまうと、地域から警戒心をもたれることがあり、試行錯誤しながら進めているところです。コミュニケーションの取り方などアドバイスいただければと思います。
小泉教授:我々もハウスメーカーのご協力をいただくことで、医療や子育て環境の充実を、遊休地の開発で進めるといったところに期待を持っています。ハウスメーカーの立ち位置を理解し、地域の方々にも徐々に理解いただけるようにコーディネーションできる方がリーダーとして望ましいと思います。上郷ネオポリスやこま武蔵台の他、東急沿線の地区で、企業と地域が協働している地区があり、いずれにおいても居住者が企業の立ち位置を理解して、折り合いがついていると思います。企業側には一定期間内にある程度の成果を出すことが求められるという事情があり、地域のスピード感になかなか合わないところがありますが、そこを合わせて行けばうまく進むのではと思います。