郊外未来デザインに迫る:俯瞰と仰望

3) ニュータウンの用途地域に関する分析

 我々はニュータウンの用途地域と人口趨勢の関連について分析いたしました。
 首都圏約680のニュータウンにおける、各中心点から半径500mの範囲の用途地域を集計しますと、約61%が第一種低層住居専用地域 (一低専)、約15%が第一種中高層住居専用地域 (一中高)、約12%が第二種中高層住居専用地域 (二中高)、約10%が準住居地域でした。都県により用途地域の指定に違いがあり、神奈川県では一低専が多く、埼玉県では一中高が多い傾向がみられます。特に横浜市は、政令指定都市の中で、一低専の指定が最も多くなっています。
 一低専は、閑静な戸建て住宅地を形成する用途地域で、コンビニも立地できない、かなり厳しい土地利用規制がなされます。そして一低専の割合が20%〜50%を占めるニュータウンや70%以上を占めるニュータウンで30〜40%の人口減少が多く生じています。一中高は、中高層の共同住宅で形成される用途地域です。一中高の割合が50%〜80%を占めるニュータウンで、50%程度の人口減少が多く生じています。
 第二種低層住居専用地域 (二低専)は、一低専よりも土地利用規制が緩く、コンビニやカフェの立地が可能です。そして二低専が多い地域には人口減少地区が少ない傾向があります。二低専はニュータウンの幹線道路沿いに、一低専に隣接して指定されています。純粋な住宅地から幹線道路沿いに出ると、買い物やサードプレイスとなる空間があるという、優れたデザインによる住みやすさが、人口持続性に影響を与えている可能性があります。
 以上の分析が、これからの用途地域見直しを検討する上でのヒントになるのではと考えています。

4) ニュータウンの俯瞰から考えられるいくつかの仮説

①緩やかに時間をかけてつくられた街は衰退も緩やかになる
 以前からの研究で、事業者が開発許可などにより一気につくったニュータウンはオールドタウン化も一気に進みやすいことが明らかになっています。区画整理は、地権者が土地売買を少しずつ、時間をかけて行うために、街が緩やかにつくられます。そのような地区では人口減少や高齢化が緩やかとなっています。

②通勤圏は拡大し通勤率は各所で低下する一方、特定の郊外地域への転出は進む
 東京都心通勤を中心とするライフスタイルが変化し、ベッドタウンとしての郊外住宅地の性格が変化しつつあると考えられます。湘南のような、リゾート的要素での競争力の高い地域への移住が進んでいます。リモートワークがこうした動きを支えていると考えられますが、コロナ禍による後押しも考えられます。

③用途地域 (土地利用) が地域の持続性に影響している
 人口趨勢との関連分析を通じて、用途地域による規制が暮らしやすさに影響している可能性があると考えています。都道府県ごとの用途地域指定の履歴や空間の実態把握、用途地域だけでなく、地区計画や建築協定による敷地分割や用途の規制など、より精緻な分析が必要と考えています。