郊外未来デザインに迫る:俯瞰と仰望

◆郊外再生の主な論点◆
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 上記①から⑨は、都市計画の枠組みの中での取組みを考えたものです。
 ①について、居住者の皆様は会社勤めで、本格的にまちづくり活動に関わるのは定年退職後の方が多く、コミュニティ活動はいままで本腰入れてできなかったところがあるので、学びながら活動する状況や、コミュニティの連帯や紐帯を強化する取組みがいずれの地区でも必要かと考えています。②について、郊外住宅地はステークスホルダーが少なかったり、人通りが多いということがなかったりするので、ビジネスの機会は限られていますが、コミュニティの自立的経営やタウンマネージメントの観点からの可能性があるかと考えています。
 ④について、廃校を上手く使えていないとか、最近はプレイスメイキングとよく言いますが、道路空間のニッチなところがにぎわい創出につかえていないとか、公的資産の利活用が手薄かなというところを最近感じていることです。子育て環境や子どもの遊び環境の充実がなければ、新規居住者の獲得はできません。⑤について、福祉サービスの充実という点については、地域包括ケアシステムの必要性が見えてくるかなと考えています。
 ⑥について、ハウスメーカーの皆様が、空き家の情報を早めに入手して、リノベーションと再販を行うというところまでたどり着くことが重要と考えています。そういった情報集約には取組み始めたところですが、例えば子育てしやすい住宅とか、高齢者の住みやすい住宅にするとか、リモートワークに対応した住宅とか、住宅ストックの多様化へのアプローチが必要と考えています。
 ⑧と⑨が本日の結論となります。各地区にはNPOや一般社団法人が立ち上がっていますが、皆様ご高齢だったり、自治体や既存の組織との役割分担や関係づくり、資金をどのように獲得して地域に再投資するかに悩まれたりしているところも少なくありません。我々は、ニュータウンで完結するのではなく、周辺の自然環境などと連携することで、魅力の高い住宅地として再生できるのではないか、遠郊外のライフスタイルや文化を創造することができるのではないかと考えています。どこを目指して活動を進めるかというところで迷いを生じることが多く、大学や民間企業がプランニングサポートに入ることが重要と考えています。また、大都市圏における郊外住宅地の位置づけが重要と考えています。周辺都市や周辺市街地との関係といったマクロ的な位置づけを、フィーダー交通、ラストワンマイル交通、MaaS等と結びつけて考える必要があるのかなと考えています。交通再編は、郊外のライフスタイル再編との結びつきが論点になると考えています。
 ③〜⑦の各分野方法論については、現場の個別事業としてすぐに始められがちですが、試行錯誤しながらのところがあります。地域経営の主体形成や必要の資金獲得、色々人々が共創する、いわゆるコレクティブインパクトをどのように発揮するのかについて、再生ビジョンづくりが欠かせません。①②と⑧が、ベーシックなところでとても大事ということを再認識しているところです。