持続可能社会実現のための住生活関連新産業とは

【質疑応答・意見交換】

参加者:道筋を示していただいたサービス・プロバイダーへの転換について、自動車産業も問題意識を持っています。トヨタさんが愛知県の高蔵寺ニュータウンで取組まれていることや、日産さんが福島県浪江町で取組まれていることを見ると、ローカルインテギュレーションを地域単位で考えて、地域交通がインテギュレーションに不可欠という考え方に立っています。そして社会実験でオンデマンド交通や自動運転はこういうものと地域の方々に見ていただき、地域の方々のスマホアプリの利用の支援を行っています。ハウスメーカーが、サービス端末としての住宅を住まい手が利用することを支援するための、地域での社会実験のあり方はどのようなものになるでしょうか。
野城先生:地域での社会実験はかなり大がかりなものになりますが、住宅については、スモールスタートが適しているのではないかと思います。大がかりになると、かえって始めにくくなり、惜しいなとよく考えています。例えば大学キャンパスの中に仮の家をつくって、小さな実験を進めるやり方が考えられます。小さな実験を繰り返して、知見を重ね、学びながら進めていくことで、大きな発展につながっていくと考えています。
参加者:大手ハウスメーカーは、自社の中で住宅履歴をしっかりと蓄積をされているようです。そして工務店の方々が中心になって「いえかるて」という共通の枠組みでの住宅履歴に取組んでおられます。住宅の履歴情報には大きな価値があると考えられますが、実際の不動産流通市場ではなかなか認められておらず、そのために価格に反映されない、だから取組みが広がらないというマイナスのスパイラルに入っていて、そこをどう打破できるでしょうか。もう一点ですが、これまでの住宅政策では耐震性・省エネ性・脱炭素性といった様々な性能一つ一つの価値を上げていくことに注力しており、そうすると新築住宅ではこれらの性能を満たしているが、既存住宅では満たしていないとなりがちです。その中で今日のお話で感じたことは、耐震性だけがとてもよいとか、省エネ性だけがとても良いというように性能を分解して考えるのではなく、ひとまとまりの価値として提供していく方向性としてあり得るのかなということです。そこをうまく進めれば、耐震性とか省エネ性に劣る既存住宅であっても、利用価値があるよねということを打ち出せるのではないかなと感じました。どうやってそこに踏み出していくかについて、非常に難しいと思いますが、教えていただきたいなと思います。
野城先生:今日お集まりの皆さまにお願いしたいことは、住宅履歴書についてそれぞれの社内でしっかりと取組んでおられるということで、 既存住宅流通の成功事例をつくっていただきたいということです。ハウスメーカーがしっかりとつくった住宅が30年後に売却されることになり、普通だったら二束三文になるところが、この金額で売れましたよというような成功事例があると、住宅履歴書をつくらなくてはならないとのスタンスより、はるかに楽しくなると思います。住宅履歴書をつくり続けなくてはならないとのマインドが支配するような世界に風穴をあけるような成功事例をつくり、そこでユーザーに開示された情報はこうですということを、第三者が監査できるレポートにまとめることができればと考えられます。そうすれば、今の新築住宅の価格はとても高く、既存住宅が住宅に困っている方々の選択肢になると考えられます。2つ目の質問に関連しますが、市場がもう少し成熟して、プレイヤーが耐震性はこのくらいリスクがありますと言えるようになると、リスクが価格に反映していくようになると考えられます。住宅の情報があって、性能がある程度劣っていても、情報が無い場合よりも評価額が上がりますよと言えるプレイヤーを戦略的につくっていくと、成功事例が増えていくと考えられます。