(3) ストック市場成熟のためのサービスプロバイダー事例
1) 住宅の「得体」を明らかにするサービス「いえかるて」
- 具体的にイメージできるような事例をお話ししていきます。一つは、既存住宅の居住価値の脆弱性に関する懸念を緩和していくサービスを整えていくものです。既存住宅は欠陥住宅の不安がある玉石混合ですが、品質・性能欠陥・経年劣化リスクや災害・事故リスクに対して、既存住宅に安心して住むことのできるようにするものです。
- そのための方策として、既存住宅を得体の知れている住宅とする住宅履歴書「いえかるて」が考えられます。これは、設計図書をはじめ施工記録、維持管理履歴など散逸しがちな住宅の情報を保管する、住まいのカルテです。既存住宅が得体に知れないままでは価値は上がりません。住宅新築後に散失するような履歴情報に関して、「いえかるて」によりトレイサビリティを高め、次の住まい手に情報が提供される、得体の知れている住宅を増やしていくことが、個人資産と国富の増加につながっていきます。
- 「いえかるて」が役割をはたしていくためには情報のMRV (Measurable 測定可能性・Reportable 報告可能性・Verifiable 検証可能性) が大事で、特に検証可能性の充実が必要です。
- 既存住宅全てということではなく、良質のストックを、「いえかるて」によって、ビジネスの対象にすることが可能と考えられます。今までは経年20年以上では木造建物にはほとんど価値がなく、土地だけ取引しますという状況でした。信頼できる情報があれば、安心して既存住宅に住むことができます。
- 先ほどご紹介したBBCの番組では、海外の方が空き家を再生していました。海外では、新築住宅を買うよりは、中古住宅を買って、手入れして維持していけば、価値が変わることなく、損せずに次に売っていけるということが普通です。投機的なことではなく、価値を維持して次に売るために手入れするということです。そのような維持管理の努力を皆さまがお助けするサービスという、新たなビジネスが考えられます。
- 検証可能性の仕組みづくりには二つの方法が考えられます。一つは情報技術を使ったブロックチェーンで真正性証明するというもので、およそ20年前につくられた仕組みです。もう一つは、日本版ビルディングサーベイヤーです。英国でのビルディングサーベイヤーは、発注者・顧客の利益のために建築の品質を評価することが責務の職能となっています。評価するだけではなく、ここを直すといくら価値が上がりますよとか、性能が上がりますよといった選択肢を提示しながら助言を行うプロフェッショナルです。この資格でのビジネスができる一方で、売り手のために評価を故意に高めにすると、その資格を失います。日本でも保険業などでは調査・診断がしっかりと行われており、住宅に関しても皆さまのビジネスとして取組むことが可能と考えられます。
2) 安心を脅かすリスクの見える化サービスの事例
- 最近は加速度センサーが、小型集積化と量産化で飛躍的に低廉化しました。バッテリーを不必要とする技術も開発されているとのことです。2020年頃には、Memsというとても小さなセンサーが搭載されたスマートフォンによる地震観測網の構築が進められました。より小さな環境振動、常時微動が拾えるようになれば、地震観測だけでなく、見守りサービスなど、用途が拡がると考えられます。
- Memsによる地震観測網のイメージは、自治体と連携して、スマートフォンによる振動観測のネットワークへの参加を各市民に呼びかけし、ネットワークによるデータを発災時の救援等初動態勢づくりや、被災証明の発行に役立てるものです。そして同一地域、類似構造形式、類似規模、類似用途の建築物の振動特性の高精度な比較分析を行い、「専門家による耐震診断をお奨めします。ご近所のおうちと違う揺れ方をしています。」などのお知らせに用いることが考えられます。