(2) ストック活用のための 産業様態理念
1) 留意点1:「規模の経済」の適用範囲縮小
- 生活者視線から日本で望まれていることは、ストック活用で住宅のアフォーダビリティを改善していくことと考えられます。そして産業視線からは、日本の住宅産業は新築市場の中で発展してきましたが、ストック活用で新たな収益構造を構築し動かしていくことと考えられます。
- 大手住宅供給者は新築市場において規模の経済で収益をあげて来られました。そしてストック活用においては規模の経済で収益を出しづらいということがあります。大手住宅供給者の新築市場における粗利は街場の工務店さんの粗利の数倍ですが、個別的要求の多いストック市場での粗利は、大手住宅供給者においても、街場の工務店さんの粗利よりも低くなっています。
2) 留意点2:居住価値の重要性と脆弱性
- 一方で、生活者目線からの、居住価値の重要性があります。居住価値というのは、家族やパートナーと共に安心して健やかに楽しく暮らすことができる、居心地の良い居住体験、空間体験と考えられます。大手住宅供給者は安心して、健やかに、楽しくというところで、新築市場では自信をもって供給することができるでしょう。しかし、ストック住宅については玉石混交で、居住価値の脆弱性、リスクが考えられます。
- ストック住宅では品質・性能欠陥・経年劣化リスクが見えづらいということがあります。また最近では気候変動や地震など災害リスクが増大しています。高齢化の中で、介護必要性などから暮らせなくリスクが考えられます。さらにコロナ禍がきっかけで在宅勤務が増えたことなどの居住者ニーズ変化による、居心地悪さや不便さなど、不適合拡大リスクが考えられます。
3) プロダクトプロバイダーからサービスプロバイダーへ
- 今までの新築住宅市場は、規模の経済のメリットを利用して、ものを製造してユーザーに渡して、収益を得るというものでした。自然界からの新たな資源採取を大量に行い、廃棄物を大量に発生することでの生産量で産業全体の付加価値が決められ、資源の循環利用の動機づけに乏しいものです。
- ストック住宅において収益を得ていく基本概念は、サービスプロバイダーです。知識・ノウハウ・システムをもって、ユーザーに建物・施設が生み出す居住価値を提供し、対価を得るというものです。産業全体での資源循環量の増大及び単位物流あたりの付加価値の増大が進められます。価値のある程度大きいサービスをつくることができれば、ある新しいビジネスモデルができるのではないかと考えています。