講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


2.日本型近代家族と住まいの変遷の4大特徴

・特徴4.モデルチェンジ伝播の速度と徹底度
 日本型のもう一つの特色は、モデルチェンジ伝播の速度と徹底度です。nLDKモデルが成立するや、農村住宅の改造にいたるまでnLDK設計となる。モデルを追いかけなければならないという圧力が強い社会であった。近代130年間にあった日本型近代家族の変遷に伴う4つの住まいモデルに適応しようとして人々が使った膨大な努力、そのエネルギーはたいへんなものでした。強制されるというよりも-これは徴兵制なんかとは違うわけで-強制というよりも幸福の約束を信じて走り続けてきた。新しいこの家に住んだら幸せになれます、というささやき。ソフトな奨励と管理の下で国民は熱心に、自発的に、モデルの追及を行った。モデルが現実を変える速度と徹底度によって日本列島の風景は短期間に何度も激変をかさね、部屋の時代にまで到達した。
 自分の自由意思で家を作る人は少数です。ではモデル追求はどうやって行われ、住人の自己表現はどのようになされるのか。私は住人の意思は住み始めるや直ちに、設計者の意図に反する住み方を始めるということによって発現されたのではないかと思っています。木造家屋の持つ可塑性も手伝って、改造をかさねることができた。改造がむずかしい鉄筋コンクリートの集合住宅においてさえ、住人は設計をうらぎる住み方を工夫しているように思います。現在の改装や改造ブームは、モデルからの解放という意味で、注目すべき現象であるのかもしれません。若い人が古屋を改造して住むとき、ご先祖の記憶ではなく、見知らぬ他人の記憶を自己流に継承している。血縁と婚姻には限らない関係性を、時空にひろげるこころみが模索されはじめたのではないか。


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