講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』
自治会長というライフハック―基町高層アパート第6コア自治会
板井三那子さん
2019年から基町高層アパートに住み始め、2022年より自治会長を務める。現在、広島市立大学大学院の博士後期課程に在籍しながらアーティストとして活動。人の記憶をテーマに、自治会長経験などを活かした作品制作や地域のアートプロジェクトなどに取り組んでいる。



1. 基町高層アパートとの出会い
2. ラジオ体操に通って情報収集
3. ほどなく自治会長に推される
4. 自治会長×アーティスト
5. コミュニティの多様な背景
6. 若い入居者の増加
7. 基町の記憶を呼び起こすー地下倉庫プロジェクト
8. まとめ



1. 基町高層アパートとの出会い
松村:  現在、日本各地の団地は厳しい状況にあります。団地センターの商店街は閑散としていますし、空き家に苦しんでいる所も少なくありません。そうした状況の中、美大生が自治会長として活躍していると伺いました。この基町高層アパートは建築分野でも有名な団地です。自治会はいくつあるのでしょうか。
板井:  高層アパートは17自治会です。市営団地全体としては、3つの中層アパートの自治会も加わって合計20自治会になります。全体で3000世帯ほどが入居可能で、高層の方はコアごとに自治会があります。それぞれ170世帯くらいあって、私は6コアの自治会長になります。
松村:  どの様な経緯で基町高層アパートに住むことになったのでしょうか?
板井:  大学の先輩の久保寛子さん@に誘われ、2017年頃から遊びに行くようになりました。それから、たけうちまりえさんAも住んでいました。たけうちさんは、それまでにもアート活動の補助金の取り方や企画書の書き方など多くのことを教えてもらっていた先輩です。そのうち久保さんが勧めてくれたんです。「基町めっちゃおもろいから絶対来た方がいい」って。大学は山間部にあります。広島の中心市街地へ帰る時の夜景がキラキラしてとてもきれいなんです。でも基町高層アパートは、真っ暗な亀裂のように見えてずっと気になっていた場所でした。
鈴木:  先輩たちの強力な推しがあったようです。彼女たちはどのような面白さを感じていたのでしょうか?
板井:  人との距離感や生活の空気感のようなものだと思います。板井だったら面白がって活動できるだろうと思ってくれたみたいです。

@.久保寛子さん:農耕と芸術の関係などをテーマに活動するアーティスト。2017年より基町ショッピングセンターで「オルタナティブスペース コア」を運営している。
A.たけうちまりえさん:画廊勤務を経て、現在はフリーランスのデザイナー。広島ものまね軍団のメンバーとしても活動している。jalart design代表。





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