個人の力を再認識致しました
広島大学にいる角倉英明さんが、基町高層アパートで板井さんを紹介して下さったのは2024年晩秋の頃だったと思います。大学院生、しかも彫刻家が、かつて「原爆スラム」と呼ばれたエリアに建設されたことでも知られるあの基町高層アパートで自治会長をやっているという事実、そして日々の大変な経験を明るくどんどん教えてくれる独特の人間力に、近年にない衝撃を受けました。それだけに、団地に興味のある人や基町高層アパートのことを知っていそうな人を見かけると、「一度広島の基町高層アパートに行って、板井自治会長に会った方がいいよ」と宣伝してきました。その結果、他の人を案内してまたお邪魔したりして、実は今回既に4回目の訪問でした。鈴木毅さんや佐藤考一さんに是非会ってもらいたかったのです。案の定、二人とも板井さんの活躍ぶりに目を丸くされていました。
私が来た時はいつもNHKのディレクターの方がカメラを携えて板井さんに密着していて、彼女(ディレクターさん)ともすっかり顔なじみになり、今回は取材まで受けました。彼女も、固有の歴史があり今や多国籍タウンにもなっているこの巨大団地が、板井自治会長の登場によって明らかに変わりつつあることに明日の希望を感じているのだと思います。2025年10月には、板井さんを取り上げた番組が放映されるらしいので、とても楽しみです。
このように巨大な団地が、一人の自治会長の出現で変わり始めるとは、これまで想像したこともありませんでした。それもとても若い自治会長がということですから本当にビックリです。ラジオ体操、モーニング定食、カラオケ、彫塑。中でも彫塑が団地の元気に繋がるというのは、本当に面白い現象です。アートが持つ力がここでも発揮されたのだと、とても嬉しく思いました。
そう言えば、かつて21歳の森高千里さんが歌っておられました。「あんた知ってるだけじゃダメなのよ。身体使わなくちゃ」と(「臭いものにはフタをしろ!」、1990年より)。この点で、板井さんを見習いたいところではありますが、いかんせん前期高齢者になりますと想像以上に身体が動きません。別の方法で頑張らせて頂きます。
(松村秀一)
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