講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


4. 自治会長×アーティスト
板井:  自治会長を交代した頃は、6コアの運営が混乱していました。通常は7〜8人で回しますが、役員は私だけでしたし引継ぎも十分でなかった。数ヶ月経つと住民の不満が一気に押し寄せてきました。交代直前に共益費が引き下げられたのですが、伝わっていない人も少なくなかったんです。10分おきに電話がかかってきて、説教を4時間ほど受けることもありました。当時はコロナ禍の名残があって、集会を開ける状況ではありませんでした。かなり追い詰められましたが、その一方でなんだか悔しかった。状況を変える方法は分かりませんでしたが、勝ちたいという思いが強かったです。
松村:  創作活動に影響が出たりしませんでしたか?
板井:  住民対応をしていたら展覧会が一週間後に迫ってきて、本当にヤバかったんです。切羽詰まって粘土をいじりながら文句を聞くことにしたら、無意識に相手の顔を創っていました。その方も自分だって気付いて、途中から座り方が妙に良くなっている。どうせ創るなら良いものにしたいじゃないですか。粘土がない時は聞く一方でしたが、良いものにしようという気持ちになると、こちらも自然と質問上手になります。職歴や出身地などを深掘りしていたら、ご自身の武勇伝をしゃべり出していて、語り尽くしたらすっきりした顔で帰っていきました。問題は何も解決していないんですけど(一同爆笑)。
鈴木:  創作活動がコミュニケーションに直接役立ったわけですか。
板井:  これなら自分を保ちながら頑張れると思いました。私の創作活動のテーマは人の記憶です。話を聞いてパフォーマンスしたり彫刻にしたりしています。だから自治会長として話を聞くことは、私のライフハックになっているんです。私としても楽しくなってきて、気付いたら計210体になっていました。2023年の展覧会では、これらの彫像を展示しました。
鈴木:  相談に来る人たちに性別や国籍など何か特徴はありますか?
板井:  女性が多いですね。男性は家からあまり出てこないようです。明らかに外国出身と分かる人だけでも3割くらいを占めていて、最近はネパール人やインド人、それからベトナム人も増えている印象です。先日も入居希望のネパール人親子がやって来ましたが、息子さんが日本語ペラペラで驚きました。もっともどの国の方か分からないことも多いです。





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