講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』
コミュニティ大工という生き方(1)−まるのこラボ/NPO法人頴娃おこそ会
加藤潤さん
(株)まるのこラボ代表取締役、NPO法人頴娃おこそ会副理事長。移住した鹿児島県頴娃町の観光地化に取り組み、6年間で11軒の空き家を交流拠点や宿に再生。2021年から「コミュニティ大工」を名乗り始め、その活動範囲は九州各地に広がり始めている。




1. コミュニティ大工とは
2. 素人目線の空き家再生
3. 同じ釜の飯を食う
4. プロの参画とサポーター
5. 協働型の建築づくり
6. 仕事だけど仕事じゃない



1. コミュニティ大工とは
鈴木:  タツノオトシゴの養殖のために頴娃町に移住したことなど、加藤さんの活動についてはご自身がSNSで発信されています。さらに松村さんが『新・建築職人論』(学芸出版社)で紹介されたりしていますが、改めてお聞きしたいと思います。コミュニティ大工とは何でしょうか。
加藤:  僕の中では「DIYとコミュニティの力で、不動産、建築、まちづくりを繋ぐ大工」と定義しています。不動産屋さんにせよ大工にせよ、専門家から見ると空き家再生は採算が合わない。相談を持ちかけた最初の段階で「できない」と言われて終わっちゃう。じゃあどうするかって考えたときに、出てきたのがDIYの力と地域コミュニティの力です。ですからコミュニティ大工の工事現場では、素人目線で取り組める楽しさやゆるさが大事になってきます。もう一つは、建築だけでなく不動産からまちづくりまでワンストップで行うということです。特定の仕事だけだと採算が合わないのは確かですが、僕の場合、家の目利きから始まって、家主との折衝や契約交渉まで行います。これらでお金はもらえませんが、その後に大工仕事が入ってくれば、そこからお金は頂けるという考え方でやっています。
鈴木:  大工作業をしていますが、いわゆる大工さんとは一線を画しますね。
加藤:  本当のことを言うと、もともと言い訳だったんです。「大工」と名乗ると、相当な腕前を持っていると誤解されてしまう。そうじゃなくて「腕は悪いよ。その代わりご飯をつくったりワークショップをしたりしているから許してね」という意味合いを込めて、「コミュニティ大工」と名乗るようになった(一同爆笑)。通常は図面・見積り・納期が建築工事の出発点になりますよね。でもこうした当たり前の事を、僕はあまり重視していない。さすがに始めた頃は図面を書いたりしましたが、工事に入ったら変更に次ぐ変更。どうせ下手な図面だし、こりゃいらんわと思うようになりました。




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