講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


6. 仕事だけど仕事じゃない
鈴木:  対価型だと過剰な品質を追求しがちです。建築の領域でもこうした傾向が強まっていて、隅々まで契約を結ぶ必要があるとか、もの凄く無駄が生じるようになった。こうした建築づくりの現状に対して、コミュニティ大工は一石を投じているように思います。
加藤:  飛行機ならLCC、宿泊ならAirbnbや民泊といった選択肢があります。しかし建築工事にはこうした選択肢がなくて、プロの職人さんは品質追求に縛られ過ぎているように感じます。品質追求とは別の考え方、「ゆるさ」とか「楽しさ」とか呼べるような尺度が建築づくりの世界にあってもいいと思うんです。それに、初めて参加した人はDIYの素人かもしれませんが、100回くらい参加していたらDIYのプロやコミュニケーションのプロと呼べるんじゃないですかね。
松村:  改めてお話を伺って感じましたが、加藤さんたちコミュニティ大工の建築づくりはものすごく手間が掛かっている。一方、工務店や建設会社といった企業は、どれだけ手間を掛けないかという判断で動いています。そこが決定的に違うと思いますね。コミュニティ大工の建築づくりはゆるいけど手間が掛かっている。
加藤:  施工精度について言うと、施主が一緒に作業するとハードルが下がるんですよ。施主が施工でミスすると、笑いが起こったり、他の参加者にあまり厳しい仕上がりを求めづらくなって現場の雰囲気がゆるくなるみたいな(笑い)。僕は日当を頂いています。仕事としての責任感を持って取り組んでいることはもちろんですが、コミュニティ大工の仕事は、仕事だけど仕事だけじゃないところがあります。半ば遊びと言いますか、そういう側面に共感できない方とは噛み合わないようです。




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