講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


5. 協働型の建築づくり
加藤:  コミュニティ大工と空き家再生は切り離せません。そのため、社会課題の解決という綺麗事を言っているように聞こえるかもしれませんが、お金が絡まないとできないことも確かです。コミュニティ大工の仕事は、1件当たり通常は数十万から百万程度、高くてもせいぜい数百万円です。僕の日当は管理費と含めて2万数千円ほどですが、田舎での生活はまあ成り立っています。旅費やその他の経費は別途請求しますが、工務店に依頼するよりは安くなっていると思います。
もっとも単にローコスト化だけを求めるような依頼は引き受けないようにしています。こうした依頼は対価型の一つなんですよ。「100万円払ったんだから100万円分やれよ」といった注文の細かい施主だと僕の現場には合わない。この点については、DIYとコミュニティとの関わりを求めることがフィルターになっている気がします。「この作業では施主も汗をかきましょう」とか「地域のみなさんがいっぱい来る開かれた現場になりますよ」ということを受け入れる人は、基本的におおらかです。協働型と呼んでいますが、コミュニティ大工の現場は施主が一緒になって作り上げる現場です。もちろん汗をかくのが大工作業以外の食事づくりでも構わない。そうした協働型の施主と組むことを意識することによって、対価型の施主と組んだことによって起こりうる弊害を回避できているように感じています。
鈴木:  社会派ブロガーのちきりんさんも協働型の重要性を指摘していますよね。リノベは施主も一緒に取り組むプロジェクトであって、そもそもプロジェクトというのは100万円出したらといってその分だけ戻ってくるとは限らないものだと。
加藤:  『徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと』ですよね。実は「協働型」という言葉はこの本から頂きました(笑い)。めっちゃ分かりやすかった。「建築は協働型の方が向いているのに対価型になっている。そのせいで業界がおかしくなっている」といったことが書いてあってピンと来た。協働型の方とだけ組めばハッピーに仕事ができると。対価型を望む方は、自身が汗をかく代わりにお金をしっかり払って細かな要求にもちゃんと応えてくれる業者に工事をしてもらったらよいと思っています。



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