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鈴木: |
一般社団法人住宅遺産トラストは、名作住宅を後世に継承する活動をされています。その代表がこの旧園田邸ですが、こうした取り組みが生まれた経緯からお話下さい。
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野沢: |
そもそもの始まりは、NPO法人玉川まちづくりハウスを通して、園田春子さんが木下壽子さんや吉見千晶さんと知り合ったことです。玉川まちづくりハウスは、林泰義さんや富田玲子さん、伊藤雅春さんといった、まちづくりや建築の専門家が始めた活動です。ここには今も、玉川田園調布とその周辺の様々なまちづくりに関する情報や相談事が集まります。ここに、映画監督の藤原智子さんから「お友達が家の継承で困っている」という話が持ち込まれたのです。そのお友達がピアニスト園田高弘さんの奥様、吉村順三設計の「園田邸(自由が丘の家)」の持ち主、春子さんでした。僕自身は玉川まちづくりハウスのメンバーではなかったのですが、この住宅について考えるなら、芸大関係者がいた方が良いだろうということで、僕に声がかかることになったというわけです。
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木下: |
2004年に園田高弘さんが亡くなられてからは、奥様の春子さんが独りでお住まいでした。元々この敷地は春子さんのご実家があった場所で、その庭先にお二人の住まいを建てることになり、同じ東京芸大で教えておられた吉村さんに設計依頼されました。77uの小住宅に2台のグランドピアノが置かれていたそうです。その後、ご実家の土地の半分ほどを春子さんが相続され、1987年に吉村さんの弟子であった小川洋さんが増築を担当し現在の姿になりました。仕事柄、園田夫妻はドイツ暮らしが長く、息子さんはドイツ在住です。この家を引き継ぐお子さんが日本にはおられず、春子さんもご高齢になられ、マンションに引っ越すことを検討されていました。ところが誰に相談しても、建物を壊し土地を分譲するといった提案だったようです。自由が丘で敷地面積150坪の《物件》となると相当な金額ですし、さらに1955年築の建物ごと買ってくれる人を探すという発想は、当時の一般的な不動産業者や銀行、あるいは税理士や弁護士にはなかったと思います。
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