講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』
茅葺民家ゴンジロウ−誰も排除しない空間の試み
岡部明子さん
東京大学大学院新領域創成科学研究科教授:磯崎アトリエ勤務、千葉大学助教授などを経て現職。公共空間を軸として「スーパーマクロな視点を持って、スーパーミクロな実践を行う」活動を展開している。




1. 茅葺民家ゴンジロウとは?
2. 茅葺屋根の葺替え
3. 里山生態系のジェネレーター
4. 炊き場の再生
5. 房総半島台風とゴンジロウ塾
6. ゴンジロウ塾の活動
7. 誰も排除しない空間
8. まとめ



1. 茅葺民家ゴンジロウとは?
松村:  岡部さんが千葉県館山市の塩見で借りている「茅葺民家ゴンジロウ」はユニークな存在です。初めてゴンジロウに行ったときは廃屋同然でした。しかし今では、塩見集落の人たちが集まる場になっていますし、同時に学生たちの学びの場にもなっている。茅葺民家ゴンジロウって、一体何なんでしょうか。
岡部:  一言で言うと、ゴンジロウは私にとって「哲学する実践」です。私は実践に長けてるタイプではありません。だからといって、何もしないとものを考えられないから、何かをしているだけなんです。ゴンジロウも、ものを考えるために行っている実践の一つだと思っています。この民家に偶然出会ったのは2009年です。何だか分からないうちに引き受けることになって、もう11年になります。いつ止めてもいいと思っていますが、決断力がなくて続いている感じです。
松村:  もともと茅葺民家に関心があったんですか?
岡部:  個人的にボロが好きなんですよ。安物という意味でなく、年季の入ったものが好きなんです。今思い出しましたが、学生時代の課題で茅葺きの渡り廊下がある小学校を設計しました。でも茅葺きとの接点はそれくらいです。ゴンジロウの改修に取り組む前のことになりますが、2011年4月からの6ヶ月間ほど、独りで住んでみました。「かや談義」を始めたのはその頃です。地元の皆さんと千葉大の学生たちで、その茅葺民家をどうするか話し合いましたが、第1回には松村先生と建築技術支援協会の方々にも来ていただきました。
松村:  この時ですよね、石川県金沢市で茅葺職人をしている野村さんが話題になったのは。参加メンバーの友人の息子さんだった。でも、その野村さんが本当にゴンジロウにやって来るとは思ってもみませんでした。




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