講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


5. 房総半島台風とゴンジロウ塾
松村:  約10年にわたり、ゴンジロウは学生たちの実践的な学びの場になってきましたが、2020年には「NPOゴンジロウ」を立ち上げたと聞きました。現在は、こちらのNPOでゴンジロウ塾という活動が行われているそうですね。
岡部:  2019年の房総半島台風がきっかけです。ここ塩見でも台風被害で、あちこちの家がブルーシートで覆われる状態になってしまった。何かできないかと考えている時に、たまたま「旅する大工のいとう」さんが現れたんですね。当初は大学院に進学したいといってやってきたのですが、「大学院でなくてもいいんじゃない?それよりやりたいことができたほうが」って誘ったんです。
ゴンジロウ塾は、地域の中で建築の実践活動をしながら学生が色々なことを考えていく場です。塾長はいとうさんです。最初に取り組んだのは布良崎神社の神輿蔵の再建で、神社の近所に移住していた建築家と一緒に伝統工法で作りました。コロナ禍で大学の授業がオンラインになったこともあり、このプロジェクトに参加した学生たちは、ゴンジロウ で2〜3週間共同生活しました。
この塾は地域工房的な活動をイメージしてます。台風被害を受けた瓦屋根は、通常の工務店に頼むと全面葺替えすることになりますが、そこまで本格的な修繕を望んでいない住人が多い。でも対応してくれる職人さんがいないので、雨漏りしてない部屋でかろうじて独り暮らしをしている高齢者が、今でもたくさんいらっしゃいます。そういう人たちが自らも手伝って作業するような、アフォーダブルな修理方法をサポートできないかと考えています。
鈴木:  そうした取り組みは岡部さんが考えられたんですか?
岡部:  NPO設立はいとうさんに任せています。活動内容については一緒に話をしていますが、オフィシャルにはゴンジロウ塾と私は何の関わりもないことになっています。
松村:  構想を持っていても人を組織するのが難しい。自分がやらないといけなくなるから、思いついても言わなかったりするわけですよ。岡部さんは上手い(笑い)。
岡部:  よく分かっていないから言えるんじゃないですかね。



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