講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


3. 里山生態系のジェネレーター
岡部:  屋根を葺替えると、必ず古茅(ふるがや)が出ます。古茅は立派な肥料です。近所のおばあちゃんに教えてもらって畑をやった時期もありました。身近なもので屋根を葺くと、それが良い堆肥になる。その堆肥をすき込んだ畑から実りを頂き、暮らしの中で茅を刈ってまた屋根を葺く。考えてみれば当たり前のことですが、全部繋がっている。屋根を葺いてみて、茅という材料が里山の生態系を回すジェネレーターであることに気付きました。茅の輪くぐりという厄除け行事がありますよね。あの茅の輪は、こうした役割を象徴的に示しているんじゃないでしょうか。里山に対するアプローチは農学系が多い。そこでは茅葺民家は重要視されていませんが、茅の輪にはそんな意味が込められているのかもしれないと思うようになりました。
鈴木:  150束ほどしかなかったんですよね。茅は新たに手に入ったんですか。
岡部:  今でも茅場はあるんです。でも外来種のセイタカアワダチソウが混ざっちゃうのが大きな問題です。実は一番良さそうな茅場は高速道路の法面なんですが、どうやって許可を取ったらいいか分からないし、刈った茅の搬出も難しい。ですから、近くで茅があると聞きつけては茅を刈りストックしています。2年ほど前で茅を刈っていた近所の茅場に、残念なことに持ち主が太陽光パネルを設置してしまいました。
もともとゴンジロウの集落にも共同の茅場があって、昔は1世帯60束ずつ刈るのが義務だったと聞きました。その季節になると、刈りやすい場所の短い茅から刈られていく。早い者勝ちだったので、要領の悪い人はとても大変だったそうです。毎年、山裾で刈った茅を蔵に運ぶ風景が見られたら、素敵じゃないですか。共同の茅場を再生したいと思っていますが、実際は低木が茂っていて外来種もたくさん混ざったままで、今のところ夢に止まっています。




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