講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


8.床座でのリラックス、椅子座でのリラックス
鈴木:  環境共生については様々な取り組みがあると思いますが、今のところ肩に力を入れてエコに取り組んでいる試みが目立つように感じます。
岩村:  そこに住めば当たり前に「エコ」なんだというのが目標とするところです。しかしそこに至るまでにはどうしても段階を踏む必要があって、当初は意識的に尖った試みを経由する必要があると思います。それが肩に力が入っていると見えるかどうかは別として。日本の住まいのエコ化も新築を中心に大分進んではきましたが、海のようにある既存住宅への適用という点ではまだまだですね。
西田:  僕は独身時代の暮らしぶりを反省して、「家ではだらだらとせずちゃんとしていよう」と思って家を設計したんですね。床をモルタル仕上げにしてテレビもリビングに置かなかった。最近、子どもが生まれたので安全性を考えてリビングにフローリングを貼ってテレビも置いてみたら、やはりだらっとした生活は心地がいい(笑い)。海外ではどうなんでしょう。だらっとしていないんでしょうか。
岩村:  いや、結構だらっとしていますよ。ただ、家の広さや立地条件の違いもあると思いますが、海外では人を自宅に招き入れる機会が多い。普段はだらっとしていても、来客があると家は片付きますけどね。私の家内はドイツ人ですが、彼女の20年に及ぶ生活実感としても、東京では日本人に自宅へ人を招く文化がないと嘆いています。都市圏でのサービスの急速な産業化とともに、そうした習慣が失われてしまったと見る事もできます。
鈴木:  戦後の団地の普及のせいでしょうか。日本でも農民と武士の文化は違うと聞いたこともあるので、一概には言えませんが。
岩村:  ドイツでも普段は当然だらっとはしますが、その質がちょっと違うのかもしれません。居住まいを正すか否かは別にして、身の置き場としての床との距離の違い、つまり椅子座と床座の差が影響していることも考えられますね。
鈴木:  インドネシアなどは床座ですが中国にくると椅子座です。床座というのは南方の文化なのかなとも思います。インドネシアには「バレバレ」という縁台のようなものがあって床座で使われます。
岩村:  その類で言うと、縁側は床座の延長としての中間領域としてとても魅力的でした。子供時代の記憶としても、この空間には外部との関係性を紡ぐうえで、実に色々な機能や使い方がありましたね。



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