講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』
西田徹さん「隗より始める都心居住」
西田徹
武庫川女子大学生活環境学部准教授。ライフスタイル研究会のプロデューサーを務めている。2007年に結婚、2010年3月に大阪市内の自邸が完成。将来、自邸でカフェや雑貨屋を開くのが夢で、現在は奥様が1階で書道教室を開いている。



1.家を建てる決心
2.街に開かれた家をつくりたい
3.住むだけでない家
4.工事監理の難しさ
5.家を建てる意味
6.新借家生活に向けて
7.後日談1
8.後日談2
9.まとめ



1.家を建てる決心
鈴木:  このたび「ライフスタイとすまい」のプロデューサーの西田さんが自邸を建てられました。第23回の住宅メーカー座談会のときに計画中の様子を少し紹介されましたが、今回は実際の暮らしぶりを紹介して頂きたいと思います。どうですか、ここに住み始めて?
西田:  去年の1月に土地を購入して今年の2月に竣工しました。3月頃から住み始めて5ヶ月くらい経ったわけですが、生活はもちろんのこと気持ちの持ちようがずいぶん変わりましたね。人生に迷いがなくなったというか、なるようにしかならないというか、そういう気持ちになりました。どこに骨を埋めるのか、今まで色々と考えてきましたが、ここに住んでみて、この街の人たちと一緒に何か行動したいという決心がつきました。ですから、もし仕事を首になってもこの近くで仕事を探そうと思っています。
松村:  いわゆる終の住処だね。奥さんも同じ気持ちですか?
奥様:  同じ気持ちです。もっとも主人と年齢が14歳離れているので、一人になった時にどうしようっていう不安はありますね。
松村:  一人になったら女性はそれまでと全然違うことを言うようだからね。ここで死ぬって言っていても「え?そんなこと言っていた?」って(一同爆笑)。
西田:  僕は結婚したのとほぼ同時期に3ヶ月間入院したんです。腰の椎間板ヘルニア手術とそけいヘルニア手術を続けざまに行ったもんだから、身体はずっと痛いし生きた心地がしなかったですね。その当時はかなり精神的にも落ち込んでいました。
松村:  入院して精神的に落ち込む人はものすごく多いみたいですね。
西田:  でも、今思えば入院経験はすごく人生にプラスでした。この経験がきっかけで、どうせなら生きているうちに楽しいことをいっぱいしようと前向きになりましたから。家を建てる決心がついた大きなきっかけにもなりました。もし、車椅子生活になってもこの家なら1階で暮らしたらええやんと前向きに考えられるようになりました。
松村:  30代で家を持った人とは違う重みがあるね。家を建てることを精神的に必要としていたわけだ。
西田:  そうなんでしょうね。しかも自分の職業とぴったりはまっていたんでしょう。色々な悩みが解消されていきましたよ。学生や卒業生も遊びに来てくれますし、作品の展示会やお料理教室をここでやろうという話も出ています。



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