講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


4.工事監理の難しさ
鈴木:  改めてお聞きしますが、最初はどういう家を狙っていたのですか?
西田:  僕も一応は建築屋の端くれということでスケッチを一杯描きましたが、最終的に「これだ!」というのが、真ん中に階段のあるプランだったんです。都心に住むんだから、階段を境に道路側を全部パブリックにして見せたらいいだろうと。ここまで家の中を見せないとダメかという疑問もありますが、どうせだから潔く見せることにしました。
鈴木:  たくさん描いたスケッチの中に現在のプランがあったんですか?
西田:  近いプランはありましたが、最終的にプランが決まったのは、構造設計をお願いした松本先生を交えて東京駅の喫茶店で話しあったときです。融資の手続きなどで待ったなしの状態だったんです。構造設計の基礎的な考え方、重量鉄骨造のラーメン構造だったらブレースを入れなくても済むとか色々と教えて頂いて、3人で一番シンプルなプランに決めました。そのプランを設計・監理をお願いする岩田さんに渡しました。
松村:  これは松本先生が登場するほど難しい構造でもないですよね?
西田:  全くその通りなんですが、工事監理の場面でとても頼りになりましたね。松本先生は検査の度に東京から来てくださって鉄骨の構造に関わることを全部チェックしていかれるんですよ。例えば、部材を見て摩擦接合面はもっとしっかり錆びさす必要があるとか、現場の人に鉄骨工事の要点を確認してくださいました。それがすごく施主として心強かったです。僕は勉強もかねて毎日現場に通っていましたが、改めて分かったことは、建物は現場で人が造っているということでした。だから、良く言うと融通が利きますし、悪く言うと結構みんないい加減なんです。例えば、この階段の裏にはわざと錆び止めの色を塗ってほしいと言っていたのに、ペンキ屋さんが別の色を塗っていたりする。僕が間違いを指摘すると「そんなことは聞いてない」と言われたりして…。そんなことはしょっちゅうありました。



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