「箱」の産業から「場」の産業へ
このところ、私自身は機会があればこう言っています。住関連産業は、今までは住宅という「箱」の質を高めて魅力的にすることに総力を上げ、その「箱」を年間にいくつ造り、いくつ売るかに血道をあげてきました。言ってみれば「箱」の産業であり続けてきた訳です。まあこれまでの半世紀はそれで良かったのです。ところが、空き家が約700万戸にも及び、人口減少・少子高齢化という現象が顕著になりつつある今は、正にその産業のあり方を根本から見直すべき時期なのです。そして、住宅が余るこれからの時代は、箱だけではなく生活の場全体を、どのようにしてそれぞれの個人にとって豊かに仕立て上げられるか、提供できるかが問われる時代になります。即ち「箱」の産業から「場」の産業に大変身することこそが住関連産業の生きる道であり、期待される道なのですと。
今回の座談会では、既に住宅メーカー各社が「場」の産業への変身に動き始めていることが実感できました。しかしながら、それはまだまだ「箱」の豊かさの一つとしての「場」への着目にしか過ぎません。まあ、産業の大変身はそんなにきっぱりとやってのけられることではないですから、焦っても仕方ないのですが、今回お聞きした新しい動きが「箱」からはみ出してしまうような産業活動にどんどん繋がればなあと思います。ささやかながら「ライフスタイルとすまい」と題してこのサイトを運営してきた私たちの本来の狙いの一つはそこにこそありますので。
(松村秀一)
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