講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


9.住宅メーカーの今後の課題1:戸建てからマンションへのトラバース
鈴木:  様々な話題を伺ってきましたが、戸建住宅とマンションの購入者の違いについてお聞きしたいと思います。かつては戸建住宅が住宅双六のはっきりした上がりでしたが、マンション志向がどんどん強くなっているのでしょうか?それとも両者の購入者はそもそも階層や年齢が違うんでしょうか?
瀬戸口:  越谷レイクタウンで戸建てとマンションの両方を分譲していますが、金額が全然違います。若い世代はマンションを買う傾向がありますが、戸建てを求められる方はいらっしゃいますから、金額の問題が大きいような感じがします。
両方を手がけている会社としては、その相乗効果を考えていないのが大きな問題ですね。事業部が違いますから。でも、近居・育孫を事業的に推進しようとすれば、親御さんには戸建住宅、子供さんにはマンション住まいをセットで提案できるような社内体制が必要だと思います。
中村:  当社も事業は完全に別になっていますが、私の部署は住生活研究なので戸建住宅とマンションの両方に関わっています。今は生活スタイルという意味ではマンションの方が活き活きしている印象があります。子育て対応とかシニア対応とか、バリエーションを作りやすい。一方、戸建住宅は価格競争にはまり込んでいるところがある。生活サポートなどソフトな部分を考え出すと、共用部をもつという集合住宅ならではの付加価値が効いてくるんでしょうね。
松村:  しかもマンションは基本的に土地付き販売ですから、地価の高いエリアでは建物の多少の工夫は価格に現れずに済みます。でも戸建住宅ではそういうわけには行きません。特に建替えになると建物のみの価格になりますしね。
鈴木:  実態として、マンションと戸建住宅で迷っているお客さんは存在するんですか?
松本:  ありうるんでしょうが、全く別事業なので、両者の境界で何が起きているのか分からないというのが正直なところです。ある種のねじれ現象が起きていることは確かで、都心のマンションは1億円でも売れるのに、郊外の6千万円の戸建分譲住宅を売るのに苦労していて、戸建てのほうが高く売れるとは限らない。
でも、戸建住宅の訪問調査をすると、戸建てだから可能な住空間を実現している居住者も多い。例えば、ここに座れば庭が見えますとか、外部との関係をよく考えた家を作ったりしている。それはたぶんマンションにはない世界です。これまでの戸建住宅はみんなが目指す上がりだったので、住宅メーカーとしてその前提に安住していたようにも思います。もっと戸建てならではの良さを訴えていかなければいけないと感じています。



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