講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


2.ゲストハウスとは?
見立:  海外で「ゲストハウス」というと、一般にユースホステルのような宿泊施設を指します。ですが、ここ10年間くらいに東京近辺に現れたゲストハウスは中長期居住向けの住居です。修士論文では、(1)居間や台所・便所・風呂等を共用し居住者同士が交流を図れること、(2)業者または大家が経営し管理を行う賃貸住居であること、(3)契約期間が1ヶ月以上の中〜長期向けであること、(4)国籍を問わず入居できることという四つの要件で定義しました。

共用食堂 個室の様子
ゲストハウスの例 左:共用食堂、右:個室の様子
http://www.hituji.jp/guesthouse/rbt/yomiuri_land/images.html

松村:  こうした賃貸住居がゲストハウスと呼ばれているんですね。
北川:  私どもが参入した頃は様々なものがゲストハウスと呼ばれていました。この言葉が商品価値を持ち始めるにつれて混乱が生まれたんだと思います。マンスリーマンションや普通のアパートまでもがゲストハウスと呼ばれることもありましたね。

ひつじ不動産で扱うゲストハウスは、国籍を問わずという四つめの条件を除いた三つを満たすものです。この媒体は、ゲストハウスを定住型シェア住居として日本に定着させることを目標にしています。商品価値を高める意味合いからも、こうした条件から外れるものはうちのポータルサイトには載せませんよといった対応をしてきました。この地道な取り組みも功を奏して、最近の東京周辺でゲストハウスというとそうした賃貸住居をほぼ指すようになってきたと思います。
松村:  ひつじ不動産のようなサイトはどれくらいあるんですか?
北川:  フォロワーぽい感じのサイトはいくつかありますが、大体はゲストハウスの業者さんがやっています。先ほどの三つの条件を満たすゲストハウスに限定して掲載しているのは、ひつじ不動産だけですね。
見立:  シェア居住であることを付加価値として売り出しているデザイン物件では「シェアハウス」と呼んで差別化している場合もあります。
北川:  もともと「外人ハウス」と呼ばれるものから発展したので、ゲストハウスという呼び方を嫌う流れもあるんです。と言うのも、一般的に外人ハウスは一般の日本人の目から見ると、あまりきれいなものではない。あくまで外国人の目線での衛生状態だったりしますから、海外にいるような感覚を味わいたいという人には向いていますが、誰にでも好まれるというわけではないのです。

でも、最近はデザイン物件が増えていて、しゃれたゲストハウスも少なくありません。居住者も7割近くが女性で、そのほとんどは社会人の方です。それで、シェアハウスという呼び方にこだわる運営業者さんもいらっしゃいますが、実質的にはゲストハウスの一つという認知になってきていると思います。
見立:  それからゲストハウスには「ドミトリー」と呼ばれる居住形態もあります。これはベッドルームもシェアするスタイルで、バックパッカーが利用するようなユースホステルをイメージするのが分かりやすいと思います。

また関西には「ミングル」というシェア住居があります。キッチンやトイレ等を共用する2〜3室の個室から成っているのが特徴で、概念的にはゲストハウスに含まれるものだと思います。低家賃がメリットだったので、バブル以降にアパート賃料が大幅に下がってから人気は下がっているそうです。
松村:  友達同士のいわゆるルームシェアとはどう違うの?
見立:  ルームシェアはもともと知り合い同士がルームメイトになりますし、そうでない場合でも住む人自身がアクションを起こして集めたルームメイトになります。でも、ゲストハウスでは知らない人同士が、初対面でよろしくお願いしますというような感じで住むことになるわけです。



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