講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


12.まとめ


横山夫妻の話の中で特に印象に残ったのは、車社会を前提に変容した町の構造が、車を用いない子どもたちにとっては、ある意味危険な空間(例えば人気のない通学路等)を生出すことになるという話です。

子育て期の家族を前提に開発された住宅地が、高齢者にとって不便でやや危険な場所になり得るというのも同様ですが、町の持続性を考えた時に、特定の年齢層や特定のライフスタイルを前提として生まれた空間構造はうまくないのではないかということです。

今年のこのHPのテーマは「郊外」ということにしていますが、現在の郊外はやはり子育て期の核家族・サラリーマン世帯のライフスタイルに向けて編成されています。これをどういう世代のどういうライフスタイルに向けて再編するのか。大変難しいですが、郊外住宅地を建設した時と同じような熱意とエネルギーをかけて考えていかなければならないテーマだと思います。

このあたりは、前回の角野先生のお話、或いは以前の沖縄レポート等、このHP上にも参考になる話は色々とあります。皆さんにも考えて頂ければ幸いです。

(松村秀一)



座談会では十分議論できなかったが、横山さん達が翻訳された「犯罪予防とまちづくり」はニューマン以来の理論の展開と、現実の政策や都市計画での豊富な実例をもとにまとめられており人間・環境系研究の一つの大きな成果といえる。ぜひ一読されたい。この本の教えるところは単純なマニュアル的な解決策ではなく、地域コンテクストにあわせた住民も参加するメンテナンスの持続の重要性である。かつて、住宅地における犯罪やヴァンダリズムは、日本ではあまり考えなくてよいというふうに言われてきたが、近年明らかに状況がかわってきた(自動販売機が盗まれずにこれだけ普通に普及しているのをみると、まだまだ安全な国だと思うが)。こうした中で、安全のためにゲイテッドコミュニティという短絡的な思考でなく、様々な観点からの「場所に基づく防犯計画」を検討する必要がある。そしてその計画は、地域社会・そしてそこで生きるライフスタイルと無関係ではない。

(鈴木毅)



今年の夏も寝苦しい夜が続いたが,それでもマンションの二階の窓は閉めて寝ていた。ちょっと前までは窓を全開にして寝ていたのだが,さすがに最近それは怖いと思うようになった。特にベランダ側の窓は絶対に閉めて寝ている。防犯のために玄関のドアも三重にロックしている。しかし,逆に不安なのは,家の中で私が倒れたときにドアのロックが多すぎて救助の人が中に入れないと思うことである。災害で逃げるときも同じで,パニックだと簡単にロックを三つも解除できないだろう。こう考えると,自分にとってどうしておくのが一番安心なのかよくわからない。

考え出すと不安は止まらない。たとえば,停電時にセキュリティシステムはちゃんと作動しているのだろうか。普通のマンションではまずそれは期待できない。防犯設備も最後は人間の目と力に頼らざるを得ない訳だから過度な期待は禁物であろう。そういえば,自宅の近所で,家の前の道にいつも立っているおじいさんがいた。最近は見かけないのだが,朝夕問わずいつも立っておられた。私はおじいさんに睨まれている気がして前を通るのが怖かったのだが,今思うとおじいさんのおかげで近所はかなり安全だった様に思う。結局,いつの時代も地域の安全は住民の目で守るということなのだろう。

(西田徹)




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