ライフスタイル考現行


5.住宅設計マンからコミュニティ大工へ
松村:  守友さんは、霧島市に住みながらコミュニティ大工をされているそうですね。
守友:  コロナ禍もあって3年前に鹿児島県に移住してきました。妻の実家がこの近辺にあるんです。それまでは設計事務所に18年間勤めていました。主に建売住宅の基本設計を行う10人ほどの事務所です。勤め始めの頃は実施設計もありましたが、建売住宅メーカーの設計施工が増えて、次第にそうした仕事はなくなりました。色々とマンネリ化を感じていた頃に妻と出会いまして、子供も生まれて自分のライフスタイルが変わり始めたタイミングで独立しました。もっとも独立当初は辞めた会社の外注スタッフのような感じでしたけど。
松村:  建築士の資格をお持ちのようですが、コミュニティ大工になったのはどういうきっかけだったんでしょうか。
守友:  外注スタッフの仕事だけでは生計が成り立たないこともありますが、現場にすごく興味あったんです。図面を書くだけじゃなく現場まで携わりたいという気持ちがあったので、コミュニティ大工という活動を聞いて、閃くものがあったんです。コミュニティ大工の基本はDIYです。潤さんにしても大工の訓練を積んだわけじゃない。だけど、そうしたコミュニティ大工を中心としたDIYにたくさんの人が集まってきて、みんな笑顔で作業をしている。自分が知っていた現場とかけ離れた様子を見て衝撃を受けました。
松村:  確かに笑顔で作業している大工さんは見たことがありませんね。
守友:  建築工事はこうあるべきという専門家の常識があります。図面通りに施工しなければならないとか、精度良く仕上げないといけないとか。でもコミュニティ大工の現場は、お施主さんがOKと言えばそれで構わない世界です。こういう世界に建築を知っている人間が関わったらどうなるんだろうと思ったのが、一つのきっかけになりました。もう一つのきっかけは「寅さんやってみる?」と水を向けられた案件があったんです。潤さんの現場を手伝い始めて2ヶ月ほど経った頃だと思います。湧水町で放課後等デイサービスを運営している女性の依頼でしたが、年度末のとても忙しい時期で、あいにく潤さんは手が回らなかったんです。




前ページへ  1  2  3  4  5  6  次ページへ  


ライフスタイルとすまいTOP