ライフスタイル考現行


4.西村商店のリノベーション:100年の歴史を閉じた店舗の再生
土橋:  定年をきっかけに2022年の10月に移住してきました。それまで広島で暮らしていましたが、もともと鹿児島市内に住んでいた父がこちらに移住していたんです。
加藤:  ここにあった西村商店は、郡(こおり)集落で唯一の店舗でした。お皿・鍋などから食料品まで扱っていたお店で、昔風に言えばよろず屋になるかと思います。奥の住居部分には、元店主のおばあちゃんが現在もお住まいです。かなりの高齢なものですから、惜しまれながらも2022年大晦日に店仕舞いをしました。現在、このスペースを借りているのが元副町長だった白川さんで、お店の復活に取り組んでいるのがつっちーさん(土橋さん)になります。
松村:  登場人物が多そうですね。白川さんはどういう経緯でこの店舗を借りられたのですか?
白川:  西村商店は長年にわたって地域の買い物弱者を支え続けてくれました。おそらく最後の頃は赤字だったと思いますが…。ですから店じまいに向けた在庫処分などを手伝いながら、どうにかならないかと思っていたんです。地域の皆さんからも「とにかくお店が欲しい」という声は聞いとったものですから。そういう状況の中、郡集落で何かやってみたいと手を挙げる方が現れたというわけです。
加藤:  つっちーさんが円美さんを訪ねて行ったんですよ。「田舎を楽しむ宿 栗のや、」のことを聞きつけて。それで色々と話をしているうちに、つっちーさんも何かやってみたいという流れになった。
松村:  ここでどういったことをされる予定ですか?
土橋:  具体的には決まっていないんです。みんなが集まれる場所になればとは思っていますが…。個人的に惚れ込んだ珈琲の入れ方があるんです。豆を洗って焙煎するという方法で、すごく美味しい。そういう珈琲を出せればと思ったりしますが、やっぱり理想は商店の復活ですね。皆さん買い物に困っていますから。
加藤:  こういうふわっとした相談がよくあるんです。店が閉店しました。でも店主さんは何かに使ってくれると嬉しい。そして何かしたい人もいる。だけどそうした思いだけで予算も具体的な活動内容も決まってない。建築や不動産の専門家が乗り出す以前の状態なんです。だけど動くと見えてくることがある。西村商店の場合、ひとまず店舗スペースをがらんと開けて、ちょっとした休憩スペースやカウンターを作ることになりました。
鈴木:  休憩スペースは組立式の小上がりになっているようですね。
土橋:  年寄りって座りたがるんですよ。すぐ座れるのが一番と思って小上がりにしてもらいました。
加藤:  いざ作り始めたらデカすぎる感じなんです(笑い)。じゃあ分割でいいんじゃないかって。ちなみに西村商店の再生は、新しい観光や食に関するスタートアップ事業として鹿児島県に申請しまして、過疎地対策の補助金を頂いています。こうしたコーディネートも、基本的に円美さんが行っています。
鈴木:  再生の取り組みは始まったばかりのようです。有木さんはどういう将来イメージをお持ちでしょうか?
有木:  みなさんがしたいことを色々とできる場所になればと思いますが、少なくとも飲んで泊まれる場所というイメージは共有していると思っています。




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