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2.丸峰の空き家リノベーション:地域おこし協力隊の宿舎へ
原田:  2023年4月に南大隅町にやって来ました。それまでは南さつま市で外国人に日本語を教えていました。国籍や年齢などに囚われない新しい学びの場をつくりたいと思うようになり、南大隅町の地域おこし協力隊に応募しました。
加藤:  原田さんは円美さん(有木さん)と高校の同級生なんですよ。
原田:  数年前から南大隅町が良い所だと聞いてはいましたが、その時は農業や田舎暮らしに関心はなかったんです。でもその後、自分のやりたいことが膨らんできて、色々と調べてぴったりだと思ったのが地域おこし協力隊だったんです。だったら詳しい人がいるじゃんと思って有木さんに連絡しまして、それがきっかけになって南大隅町に飛び込むことになりました。
松村:  地域おこし協力隊だとすると、この住まいは役場の官舎でしょうか?
加藤:  円美さんがメンバーになっている風と土の学び舎というNPO法人があります。厳密にはその団体が役場に貸していることになります。まずNPO法人が大家さんから借りて、円美さんがコミュニティ大工として改修する。NPO法人は改修費を加味した家賃で役場と契約している。このように説明すると簡単なようですが、空き家を借りたNPO法人はきちんと直す必要があって、実質的に円美さんがその責任を負っているようなものなんです。
有木:  改修作業には、原田さんだけでなくご両親も参加されました。床がガタガタだったので、断熱材を入れつつ合板を挟んだりして床面を調整しましたが、ちょっと段差ができてしまったところがあります。この建物は結構傾いているんです。優先順位を決めて改修を進めましたが、予期せぬ雨漏りが発生したりもしました。
加藤:  古民家には色々なことが起こります。地域おこし協力隊に応募してきたとしても、いきなり「この空き家に住んで下さい」と言われたら厳しいと思います。原田さんは、もともと円美さんと知り合いでしたが、やはりそうだったと思います。だけど改修作業を一緒にすると、建物をめぐる関係性に変化が生じてくる。単なる借主と貸主、つまりクレームを言う側と言われる側とは別の関係になるんだと思います。




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