自社の建物で実験的なリノベーションに取り組んできた
吉原住宅
は、2008年のリノベーション内覧会をきっかけに、自社建物を「リノベーションミュージアム」と呼ぶようになりました。ここではライフスタイルを見る視点・第43回の続編として、さらに二つのリノベーションミュージアムを紹介します。
なお吉原住宅の取材には、次の方々も参加しました:井上朝雄(九州大学)、岩佐明彦(法政大学)、奥茂謙仁(市浦建築都市コンサルタンツ)、田島紀行(千葉工業大学)、徳田光弘(九州工業大学)。
吉原:
ここ清川という地域は、天神駅からも博多駅からも徒歩15分ほどの位置にあります。元々は遊郭街でしたが、時代の流れで1950年代中頃にはこの地域の建物が大量に売りに出されたそうです。その一つを父が買い取り、「いずみ荘」という旅館を始めました。
旅館となったその建物には100畳敷の大広間がありました。ここで生まれ育った私は隙を狙っては同級生と野球をしたものです。風情ある和風旅館でしたから、現在も残っていれば歴史的な建築物になっていたかもしれません。しかし、1970年代に入る頃から旅館の大火事が全国各地で相次いで起こり、現在のRC造賃貸マンションに建替えることになります。「
新高砂マンション
」が竣工したのは1977年です。日本住宅公団の再開発事業の中で、福岡の先導的プロジェクトだったため、公団としても相当に力が入っていたようです。
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