ライフスタイル考現行


4.冷泉荘を巡る@若手クリエイターによるセルフリノベーションの実験
松村:  今や冷泉荘は福岡の若手クリエイターやアーチストが集まる場所として有名ですね。
杉山:  この建物は集合住宅を事務所へコンバージョンしたものです。室内の改装は入居者の方々に全て任せることにしていたので、そうした業種を中心に募集しました。当初は2006年から3年間限定のプロジェクトでしたが、耐震補強をすれば維持できることが分かったので、ビルを残すプロジェクトへ切り替え、現在の「リノベーションミュージアム冷泉荘」となりました。



松村:  杉山さんは2010年から二代目管理人になったそうですが、そもそもどうやって冷泉荘と出会ったのですか。
杉山:  僕は大学の博士課程の時に、エオリアン・ハープという楽器を研究していました。エオリアン・ハープは風で鳴る楽器なので、風の通りが良い場所を都会の屋上で探しているうちに、冷泉荘に出会いました。吉原さんの建物で2年間ほど研究をしていたところ、結果として就職のインターンシップ活動になっていました。学生時代にはイベント企画などもやっていたので、冷泉荘の管理人業に適性があったようです。
吉原:  彼に当てはまる職業は、ここしかなかったんじゃないですかね(笑い)。実はスペースRデザインのスタッフの牛島も冷泉荘の入居者だったんですよ。
牛島:  学生団体としてここに入居して、ふらふらしていたら職を与えて頂いたという感じです。その団体はNPO法人ドネルモといって、2010年の5月に入居しました。現在も冷泉荘の5階に入っていて主にコミュニティデザインをしています。当時はアートやサブカルなど色々なジャンルの活動をしていました。一人5000円ずつ集めて家賃を支払っていましたが、みんな学生だったのでアルバイト代を毎月の支払いに充てていました。
鈴木:  お話を伺っていると、やはり入居者の力がすごいですね。ところで、杉山さんが入られたときには冷泉荘はどんな状態でしたか。
杉山:  第1期の3年間でほぼ全室がDIYで改装されていました。前入居者の改装を受け継ぐ仕組みになっているので、次の入居者は変えたいところだけを変えていきます。ですから、後の入居者の改装費の方が少なくなる傾向にあります。
吉原:  入居者さんがセルフリノベーションで改装できて、敷金なしの定期借家で借りられて、退去時には原状回復の負担なしという考え方は、「Rプロジェクト」からヒントを頂いています。それを1棟単位でやったところが新しかったんじゃないでしょうか。
実はスペースRデザインの名前も、Rプロジェクトにちなんでいます。ご存じのように、Rプロジェクトは家具のセレクトショップを運営されているイデーさんが仕掛けたプロジェクトです。冷泉荘をリノベーションする前に色々と調べましたが、当時は参考になるような目立った取り組みはRプロジェクトだけという状況でした。



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