高齢者等住まい関連施策について
 〜ハウスメーカーへの期待〜


3) 元気高齢者が地域で暮らせる環境整備

 国立研究開発法人国立がん研究センターの「社会と健康研究センター予防研究グループ」ホームページによりますと、社会的な支え (心身を支え安心させてくれる周囲の家族、友人、同僚などの存在) が少ないグループは、脳卒中の死亡リスクが高いとのことです。他にも地域との関わりがあると認知症の進行が遅くなるといったことも言われております。高齢者が孤独にならないような住まいづくり・まちづくりが必要と考えられます。
 その先進事例ですが、大和ハウス様が取り組んでおられます上郷ネオポリスでは、まちの拠点としてコンビニ併設型コミュニティ施設整備や、住民主体の運営・新たなサービス・生きがい創出などが進められています。団地はおよそ50年前に供給されたものですが、空き家率は2%ということで、この時期に供給された団地でこの空き家率は驚異的と考えられます。多主体が連携したまちづくりが、居住者のまちへの愛情に結び付いている事例と考えられます。
 福岡県太宰府市では、アクラスグループによる、「地域と共にある高齢者のための街」をテーマに4カ所の高齢者向け住宅 (サ高住・有料老人ホーム) が開設されています。これらの住宅では地域に開かれたカフェ・食堂・ギャラリー・図書室・フィットネスジムを併設し、入居者と地域の交流を促進しています。そして入居者が施設内で働くことで、社会参加と生きがいを創出しています。
 大阪市大正区では長屋の改修により、セーフティネット住宅と併せ、「アート」と「食」を触媒にした多世代が集い相談できる、生活困窮者のための居場所整備が行われています。
 福岡県大牟田市のケアタウンたちばなでは、公営住宅団地建替えによる余剰地に、社会福祉法人により、地域密着・多機能・地域交流をコンセプトにした、サ高住を含む複合福祉施設整備 (特養、小規模多機能、デイサービス等) が行われています。
 宮城県仙台市のアンダンチレジデンスでは、敷地内に、看護多機能、和食レストラン (夜は居酒屋)、保育園、障害者就労支援事業所、コミュニティスペース・駄菓子屋など、建物完結型ではない、地域住民が訪れ交流する「街」がつくられています。
 秋田県鹿角市では、社会福祉法人がエリア内 (「けまないらくらくエリア」) に、高齢者グループリビングと、空き家を利用した多世代交流スペースや生きがい就労拠点、グループホーム、特養、デイサービスセンターを展開しています。
 大規模な用地確保の難しい都市部においても、特養や小規模多機能、住宅型有料老人ホームなどを組み合わせて、介護と住まいのニーズを受け止め、地域で暮らし続けることを支えている例が存在します。また、神奈川県藤沢市のパークサイド駒寄のように、団地の中で住戸を小規模多機能に転用し、可能な限り団地で生活できるようにする取組みもあります。
 旭化成様のヘーベルVillage東武練馬「ビアンテラス」(東京都板橋区) は、元気なシニアのための安心賃貸住宅ということで、月1回の相談サービスや駆けつけサービスなどを受けられる住宅です。サ高住についても、こういったサービスで住み続けられる、元気な高齢者向けの住宅が増えていくことを期待しています。

4) 単身高齢者世帯/低所得高齢者世帯への対応

 今後、単身高齢者や低所得高齢者が増加することが見込まれます。これは行政側が考えなければならないこととは思いますが、ハウスメーカーの皆様にも何かお力になっていただけることがあれば、お願いしたいと考えています。