高齢者等住まい関連施策について
 〜ハウスメーカーへの期待〜

(2) 新たな住宅セーフティネット制度/居住支援

 住宅セーフティネット制度は、平成29年の「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」改正で制度化されました。改正の背景には、それまで住宅セーフティネットは主に公営住宅が中心でしたが、公営住宅の供給数増加が見込めない一方で、民間賃貸住宅の空き家率上昇という状況がありました。また、大家さんが家賃滞納等への不安から、住宅確保要配慮者の入居を拒否することがあるという状況がありました。そのため、住宅セーフティネット制度では、要配慮者の入居を拒まない住宅の登録制度と、居住支援協議会による入居支援、国と地方公共団体による経済的支援 (登録住宅の改修費補助・家賃と家賃債務保証の低廉化補助・住替え補助・居住支援活動補助) の仕組みをつくっています。これらの仕組みの地方公共団体における拡がりは十分とは言えないため、国から仕組み導入の働きかけを進めているところです。
 居住支援協議会は、不動産関連団体と、居住支援法人等の居住支援団体、地方公共団体等の連携で設立されるものです。この中の居住支援法人は都道府県の指定によるもので、現在は全国500余り、1つの都道府県に1以上の居住支援法人が活動しております。居住支援法人の業務は、登録住宅の家賃債務保証、情報提供・相談、要配慮者の生活支援などで、活動資金は先ほどあげました居住支援活動補助や、寄付、クラウドファンディングなどです。
 要配慮者がどういった方々かは、法律で低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子育て世帯と定められています。さらに各地方公共団体が要配慮者を追加することが可能となっております。国交省アンケートによると、多くの居住支援法人は高齢者や精神障害者・生活保護受給者について実績を有しています。一方で、外国人や犯罪被害者・刑余者については実績も少なく、約2割程度の居住支援法人では支援対象外となっています。支援内容は、多くの法人が、住まいに関する相談や物件・不動産業者の紹介など、住まいの確保を支援しています。また、入居後の安否確認や緊急対応の支援も行っています。家賃債務保証や就労支援、死亡後の遺品処理などを行う法人は、今のところ少ない状況です。
 居住支援協議会は全都道府県で設立されており、さらに72市区町でも設立されています。
 居住支援の促進に関する国の取組としては、各団体の活動ノウハウや課題を共有する会議・連絡協議会開催や、居住支援協議会等の財政支援、居住支援協議会伴走支援、都道府県や市区町村による取組みへの個別支援、情報支援を行っています。

(3) 高齢者の住まいとまちづくり

1) サービス付き高齢者向け住宅 (サ高住) の状況

 サ高住の登録制度は、およそ10年前、平成23年10月に施行された「高齢者の居住の安定確保に関する法律」(高齢者住まい法) 改正により創設されました。登録数は制度創設以来順調に増えて、令和4年3月末現在の戸数は274,911戸です。高齢者向け住まい・施設にはサ高住の他に有料老人ホームや介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、認知症高齢者グループホームなどがありますが、この10年間で右肩上がりに供給数が伸びているものはサ高住と有料老人ホームです。
 令和3年8月末現在、サ高住件数の75.8%で1つ以上の高齢者生活支援施設が併設又は隣接しています。併設施設の種類は、通所介護施設 (サ高住件数の42.2%)、訪問介護事業所 (41.2%) が多くなっています。
 サ高住の住戸面積基準は原則25m²以上、食堂・居間・台所等の十分な面積の共用設備のある場合は18m²以上となっております。実際の住戸面積の分布を見ますと、25m²以上のサ高住戸数割合は21.3%、25m²未満は78.7%です。また要介護高齢者の入居割合を見ますと、サ高住における自立高齢者は8.1%で、介護付き有料老人ホーム9.3%、住宅型有料老人ホーム4.9%とほぼ同等になっています。サ高住制度を創設した背景には、介護を必要としない高齢者のための住まいをつくるという考えがあったと思うのですが、実際には有料老人ホームと同じような使われ方をしているサ高住が多いようです。
 サ高住の入居費用は、家賃、共益費、サービス費 (生活相談・見守り) 合計の平均月額約11万円/月です。通常の住宅で利用する生活相談・見守りサービスの費用は3〜4万円/月程度ですが、こうしたサービスを利用して住宅に住み続けるか、サ高住に入居するかは、個々の選択になると考えられます。