高齢者等住まい関連施策について
 〜ハウスメーカーへの期待〜

(4) ハウスメーカーへの期待

1) 自宅に住み続けるための環境整備 (技術開発)

 地域に住み続けるためには、在宅サービス (訪問・通所) を受けやすい住宅や、要介護者の身体状況に配慮した住宅 (介護者がサポートしやすい、バリアフリー、視覚・聴覚変化やヒートショックへの対応)、家族がサポートしながらも、ある一定のプライバシーが確保される住宅が求められると考えております。
 在宅サービスを受けやすい工夫の例としては、夜間の訪問サービスに対応した鍵の工夫 (キーボックス等) や、家と道路の間のバリアフリー、水回りの一体的配置によるバリアフリー対応・ヒートショック対応、高齢者居室のベランダからの出入りや同居家族居室との位置関係などが考えられます。国からは「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン」を平成31年3月に公表いたしました。そしてリーフレットや冊子、ウェブコンテンツなどのツールを作成し、ガイドラインの普及を展開しています。
 Housing Tribune社が約40社を対象に実施したアンケートで「今後、商品・技術開発を進めて行くうえで注力したいテーマ」で、「高齢者対応」をあげた会社は3社と意外に少なかったのですが、「温熱改修」(10社)や、「IoT・IT」(6社)といったテーマも高齢者の生活に関わるものと考えられます。ハウスメーカーの皆様にも、高齢者対応の視点からの技術開発に注力していただきたいと考えております。国としても「人生100年時代を支える住まい環境モデル事業」として、ライフステージで変化する居住ニーズに対応し、高齢者・障害者・子育て世帯など誰もが安心して暮らせる住環境整備のモデル的な取組みへの支援を行っております。建設・改修工事費と、技術の検証費も補助対象としており、技術開発にこうした制度も活用いただければと思います。過去に支援した事業には、IoT照明でのゆるやかな見守りの技術検証などがございます。
 住宅内の温熱環境が健康に与える影響について、国土交通省の補助により調査が行われています。これらの調査によって、断熱改修後に居住者の血圧が下がるなどのエビデンスが集められています。

2) 高齢者の住宅資産の循環活用 (早めの相談体制)

 住宅・土地統計調査によりますと空き家の総数は、この20年で約1.5倍 (576万戸→849万戸) に増加しています。その中でも賃貸用又は売却用ではない「その他の住宅」は349万戸と、この20年で約1.9倍に増加しています。既存住宅流通量 (持ち家として取得した中古住宅数) を見ますと、一戸建・長屋建では平成元年の9.9万戸から平成30年は8.1万戸と、18%減少しています。一方で共同建は4.5万戸から7.9万戸と76%増加しています。このように一戸建・長屋建の中古住宅はなかなか流通が進んでいません。
 高齢者が施設入所などをきっかけに自宅に住まなくなったときに、自宅をうまく資産活用する仕組みについて、研究会を立ち上げるなどの検討を進めて頂いております。住団連の皆様のお知恵もお借りしていきたいと考えております。一般社団法人移住・住みかえ支援機構では、高齢者の住宅を借り上げて、子育て世帯等へ転貸する仕組みを設けております。国もこの仕組みに対して、基金で、空き家が多く生じるリスクに対する保証を行っております。
 高齢者自身はサ高住などに入居する決断を先送りし、要介護になってから、家族の決断で入居するケースが多いようです。こうしたケースでは自宅の資産活用も進まないと考えられます。もっと早い段階で、高齢者自身が元気なうちに住み替えや住宅資産活用について相談できることが重要と考えられます。相談先は、住み替え先であるサ高住等の運営者なのか、もともとの住宅を供給したハウスメーカーなのかということがありますが、住宅資産活用について供給者であるハウスメーカーが関わることを今後議論していく必要があるかと考えています。