講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


5.デザインクラブの立場

小川
建物全体のマネージメントをして監修してくれる人と、個々の住戸をやる人とを二つに分けないとしんどいと思うんですね。 監修してくれる人には、私たちもチェックをしてもらいたいし、それを記録にするこういう事務処理的な事というのは実はすごく大切です。 お客さんがこんなはずじゃなかったとトラブルにならないようにするには、結局誰かがおしりを拭かないとお客さんが納得しないんですね。

私たちはデザイナーズ集団とかコーディネータ集団とかではなくて、お客さんの言うことを現場に正確に伝えて、その通りになるかどうかを担当する集団なのです。 例えばお客さんに「トイレに石を張りたい。2重床で音も大丈夫のはずだから」と言われた時に「ああいいですね」と言わないのがうちの会社です。 なぜかというとアフターがついて回りますから。後でやり変えてはつって音が出るとか、こんなにかかるとは思わなかったとか出てくる。

今技術的にできない工事ってないんですけど、事業主側の工事としてやってはいけない、あるいはお客さんが自己責任としてやるべきことというのを、明解に仕分けをする必要がある。 だから私たちはお客さんが防音室にしたいといっても受け付けないようにしています。 音の問題というのは未だに絶対解決していないので。ですからそういう時は、コンクリートブロックを立ち上げて、部屋をつくって終了。 後はお客さんが自分の自己責任でヤマハの防音カプセルをそこに搬入してもらう。引渡し上も契約上も防音室なんていう言葉は出てこない。 そうでないと、音っていうのは住んでいる人はいいんですけど、上下左右の人から問題になると裁判になる。 そうするとローン払ってせっかく楽しい生活をしようと思っているのに台無しになる。だからそこは全部自己責任においてやってもらう。 ドイツ製の蝶番とかだとか輸入物の取り寄せもしません。 お客さんがそれを取り寄せるのに一ヶ月かかったら残金決算できなくてたいへんな事になるわけですよ。 だからお客さんからの材料支給というのは一切しません。

それから、この人がずっと住むか誰もわからないし、将来何があるかわからないから、お客さんの権限で取っていいもの取ってはいけないものがある。 担当者は必死ですが、担当者とチェックする人間を分けて、違う観点で見る人がチェックをしないといけないです。


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