スマート化とwith/postコロナのまちづくり

(4) ジェイコブズの都市論とコロナの影響

 ジェイコブズは「イノベーションは都市で起きている」として、色々な業種が都市に集まっているからこそ、イノベーションが起きているということを実証的に明らかにしました。イノベーションが維持されるには、各部における用途の混在や、分節化された街路、建築物の年代や形式、家賃が多様であるということが条件になると論じています。都市に人が集まり、ある程度密に建物が集まることで、都市の魅力が生み出されている、そこに価値があると述べています。
 1980年代以降の都市計画はミクスドユースを原則にすることに大きく転じています。都市再生において色々な用途を混ぜ、結果的に都市部に人口が集中して、外円部では人口減少するようなエリアが生まれるということになりました。デベロッパーも工夫して、オフィスが中心の街においても、1階部分は様々な用途にして、ミクスドユースの空間をつくるといった、ジェイコブズの考え方をうまく取り入れてきました。地方都市ではコンパクト・プラス・ネットワークという、コア部に人やモノを集めるということを20年ほど前から進めており、立地適正化計画経度も数年前にできました。
 クリエイティブな人材を集結させる、様々な楽しみがあるので働く場所としても優位性が高まって色々な企業が立地する、その企業の人たちが働くだけではなくて帰りがけに楽しんで帰る、そのための箱が先端企業や公共交通を前提に大量に用意されるという都市がつくられてきました。それがコロナの影響を受けています。影響の一つは、オープンエアの空間が必要ということです。そして人の密度のコントロールを適切に行う必要があり、今まで建蔽率や容積率は建物の外部環境に対する影響を考えていたと思うのですが、実際に内部利用の密度を日常的にコントロールしていたかというとあまりできていません。オフィスの利用者がどうなっているのか等の内部密度をコントロール・制御することが今後求められてきますし、一人当たりの床面積を増多させていくことになるかと考えます。

(5) バーチャルとリアル:都市的なものは何が残るのか

 一方で、バーチャルでできることも増大しています。特に物販関係というのはeコマーズ置き換えられていますよ。国交省都市局の皆さんと話をしていると、地方都市では買い物や飲食を楽しむ場所が保たれてきましたが、コロナの影響で、一体何が残るのだろうということを心配しています。また、クリエイティブワークというのは人が集まらないとできないと言われていましたが、実際にやってみたら、そうではないということが分かってしまいました。大学では、演習で学生たちがコラボレーションをして一つの計画を作りますが、その作業はバーチャルでできてしまいました。議論して計画をつくるという作業も、アイディアをGoogleやMicrosoftを使って随時更新・編纂して書き留めていき、書き留めたものは後でいくらでも整理できるということで、非常に効率よくできてしまいます。
 鉄道やバスといった公共交通に対してもとても大きなインパクトを与えています。都内ではインフラが発達していますが、最近では、MaaSや新しいモビリティの動きもあり、従来型の公共交通は運営が難しくなっていって、新しいスタイルに変わっていくことが加速されるかもしれないですね。その中で、生活の場としての郊外ライフが、大きく見直されてようとしています。
 バーチャルで働くことができるということで、住宅の近くで働くというライフスタイルが普及しています。テレワークは私が学生のころから言われていましたが、あまり進んでいませんでした。しかし現在は、コロナの影響でかなり進んでいます。郊外というのが非常に注目されていて、今人口動態を見ると、東京は転出超過、埼玉では転入超過、神奈川でも転入超過になっていますから、多くが地方に移り住むというのは直ちに起きていなくて、郊外へと移り住むようになっていると思います。また、Dualな都市というのも重視されていて、バーチャルとリアルとの関係や、感染症や地震の発生時と平時の関係も大事です。色々な状況に対応できるような都市や地域づくりが、郊外も含めて求められています。