スウェーデン『住み続ける』社会のデザイン(後編)

 

3) 安心住宅

 75歳以上を対象とする安心住宅は、当初はバリアフリー化と共用空間は配置されているという住宅として供給スタートしたのですが、それでは安全・安心を標ぼうしているにも関わらず安心が担保されないではないかという批判を受けまして、現在では相談・見守りを行うミカサスタッフという職員が配置されています。
 現時点でのストックホルム市での供給状況ですが、シニア住宅は市内12ヶ所、1,106戸供給され、安心住宅は市内7ヵ所、643戸供給されています。いずれも他の公的賃貸住宅と同じように待機者リストがあり、一般的な公的賃貸住宅よりは短いですが、それでも待機期間はかなり長期です。入居要件は、年齢条件を満たすことと家賃が支払えることです。
 ミカサ社のシニア住宅・安心住宅共に、新規に建設されたものはほとんど無く、既存ストックの活用によるものです。この見学させていただいたバーデュレンズという住宅は、1981年に集合住宅として供給されたものですが、2011年に安心住宅とするために改修し、12年から入居開始となります。住戸数は56戸で1Kから4K、広さは49m²から106m²までとかなり広いものです。2Kが24戸、3Kが26戸、4Kが1戸、近親者の方が泊まりに来たときに提供できるようなゲストルーム (1泊300クローネ) も用意されています。家賃は7,900〜14,200クローナです。ミカサスタッフは平日の日中だけ常勤し、共用空間の管理、住民同士の活動の支援、相談業務というような限られた分野の業務を担っています。
 7階建ての最上階と最下階に共用空間が整備されています。こちらは皆さんが座ってお茶を飲んだり、食事したりできるようなカフェ空間と、キッチンが併設されています。利用者は一週間平均10〜15人、多いときで30人とのことです。入居者の中で映画鑑賞グループとかワインを楽しむ会とかいろいろな自主サークル組織があり、イベントに活用されているそうです。あとは有償の朝食ビュッフェもここで提供しているというお話です。スウェーデンは非常に本を読むことを楽しみとしている方が多い国民性ですが、エントランスのところにライブラリーがありまして、こちらのライブラリーでは住民が本を持ち寄る他に、近くのストックホルム市立図書館から2週間ごとに本を借り入れるサービスを行っているそうです。それ以外にも運動室や共用洗濯室、車椅子車庫などがあります。7階には談話室、サンルーム、屋上庭園があります。余暇活動を提供するようなサービスは行われていませんが、情報掲示板やアート活動の展示空間といった、自分たちで活動していただくための色々な試みがなされております。ミカサ社が実際の活動にはタッチしておりませんが、住民自身によってコミュニティ活動、読書会、ガーデニング、カフェミーティングなどが展開されています。
 皆さんがどういった理由で入居されたのか伺ってみたのですが、安心感があるとか、誰かとつながっている感触が得られるということでした。また、住宅の立地はいずれも中心市街地の地下鉄から近い、非常に利便性が高いところですが、利便性を買って入るという方もいました。非常に大きい一戸建てに住んでおられて、住みきれないので入居したという方もおられました。 fig3