スウェーデン『住み続ける』社会のデザイン(後編)

 

2) ミカサ社モデルルーム

 写真5はストックホルム市のアルメニッタ (住宅供給公社) としてシニア住宅と安心住宅を供給しているミカサ社のモデルルームを見せていただいたものですが、こういった色彩のコントラストで認知症の方の空間認知能力をより促進するという理論に基づくものになっています。ICTの利用が非常に盛んで、ドアホンの横にディスプレイが設置されていて、薬局とか、タクシーサービスを呼ぶといった日常生活を送っていく中で必要なサービス主体に連絡を取ったり、タクシーが迎えにくる時間がディスプレイで示されたりということが行われています。基本的にミカサ社にはケア付き住宅がなく、ホームヘルパーが来るわけですが、ヘルパーが薬を保管しておいて必要な時間に提供するというために、薬収納場所を開閉するキーとなるチップを、ヘルパーが所持しています。
 重要なサニタリールームについて、まずサニタリールームに誘導することを目的として扉の色にコントラストを持たせるとか、当然のことながら車椅子の方が洗面所にアクセス可能とか、壁に可愛い動物の絵をコントラストに貼り付けることで認知症の方でも水場を怖がらずにシャワーを浴びることができるといった配慮がなされています。
 キッチンまわりでは、冷蔵庫を開けっ放しにしたときにアラームが鳴るとか、オーブンなどを置かないといった、危険の排除が非常に重視されています。
 これは壁に張り付いているタブレットで、一日の食事の時間、シャワーの時間、薬の時間などを、ヘルパーや近親者が入力していくのですが、認知症の方が1人でお住まいであっても日常生活ができるような工夫を取り入れています。また、昔の写真や家族のポートレートといった色々な長期記憶を喚起するような画像を取り込むディスプレイとテレビを一体化したデバイスが導入されています。 fig2