講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』



4.馬渕さんのDIY その2:和室から洋室へ
馬渕: 
ここはもともと畳敷きの6畳(約9.9m2)和室を洋室に改修した部屋です。南側に3尺巾の廊下がありましたので、改装後はほぼ8畳間(13.2m2)になりました。2003年の10月から初めて2ヶ月弱かかりました。
松村:  一日で何時間くらい作業されるものなんでしょう。キリのいいところとか、一日の目標を設定して作業するんですか。
馬渕:  10時間くらいです。少なくとも6時間くらいはやっているでしょうね。最初は一応工程表のようなものも作りましたけど、始めてしまいますとねぇ、なかなか作業を止められませんね。形ができてくるとおもしろくて仕方がないんです。嫌になるのは壊している最中。反省しきりです。長押をはずす時なんかは大丈夫かなと思いながら恐々やりましたよ。(笑い)。
鈴木:  そうですね。壊し方の順序が難しそうですね…。ここは奥様のお部屋ですか。
馬渕:  ええ、何となく家内のホビールームになってしまいました。パッチワークなんてやってるもんですから。
奥様:  物置兼私の逃げ場所的に使っています。お陰で明るくって気持ちいいですよ。
松村:  かなり立派な仕上がりですよね。
馬渕:  いまは使い勝手の良いクロスがありますから、そのおかげです。プロは現場でクロスに糊を付けて貼りますが、これがなかなか難しい作業なんですね。しかし、今は生糊付きのクロスも販売されていて、下地がモルタルなのかボードなのか、壁に貼るのか天井に貼るのかなどと、下地の条件に応じて糊の種類や厚みも変えてもらえます。それらを壁柄と併せて指定してHCから注文すると10日から2週間くらいで宅配便で到着します。普通の壁紙よりはちょっと割高ですが、強力な糊が厚く付いていますから、ちょっとずれたりしてもまた剥がしながら何回でも貼り直しが利きます。手っ取り早くてよいですね。
松村:  段々と品物のほうが工夫されてきているんですね。
馬渕:  素人でもちょっと気をつければできるようになっています。珪藻土の壁なんかも楽にできますよ。8月末に幕張メッセで開かれたDIYショーでも、私達アドバイザーがデモンストレーターになって、珪藻土やフローリングの貼り方などをお客さんに実体験してもらいました。
松村:  手順を入念に計画しないと取り掛かれないですね。
馬渕:  まあね、わりと皆さん行き当たりばったり的のようです。そのほうがハプニングがあって面白いなんて‥‥‥‥。でも私なんかは昔から「段取り7分」って言われてきましたから。これも性分なんでしょうけどね。
鈴木:  方針や手順はご自分で考えられたのですか。
西田:  それと、図面は書かれましたか。
馬渕:  ええ、スケッチ程度ですけれど。納まり部分はフリーハンドでも必ずディテールを描きます。精度を要求されそうな箇所は原寸でしっかり描きます。例えば、このクローゼット扉ユニットなんですけど、そんなに重いのかなと思うんですが、この扉が一枚30kgある。30kg / 枚×扉枚数分の加重が上枠に架かると施工説明書に書いてあるんですね。そうするととてもじゃないけど在来の押入の鴨居の兼用じゃ持たない。天井裏に潜って色々考えた結果、二階の床梁から丸棒で吊るす事にしました。これがそのときの吊金物の納まりのディテールです。
松村:  資材費は概ねどれくらいかかりましたか。
馬渕:  20万円くらいでしょうか。費用がかかったのは根太用の木材や合板などの下地材料です。HCですと長尺物の素材がなかなか置いて無いんです。せいぜい1,800mmから2,100mmどまり。3,600〜4,200mmの根太や垂木が欲しいとなると、どうしても材木屋さんにいかないと揃わない。ところが、HCなら一本でも売ってくれますが、材木屋は束でないと売ってくれません。2本だけ欲しいときでも9本束とか12本束じゃないと売ってくれませんので高くついちゃうんです。
松村:  これだけの改修になるとプロに頼むとかなり取られますよね。20万円というのは非常に安いですね。
馬渕:  でも労務費は別ですよ(笑い)。そうかカーテンも入ってないですね。
鈴木:  洋室にしようという希望は奥様が出されたのですか。
馬渕:  子供たちがいなくなって、何かにこの部屋を活かせないかという話になったんです。
畳の部屋ってメンテナンスが大変なんですね。それと廊下との境に障子、下り壁があって昼でも暗い部屋だったんです。
奥様:  やりたいのが一番の理由だったんでしょ(笑い)。
馬渕:  それは言えるかも知れない(苦笑)。
松村:  趣味ならばやり続けないといけませんから、これで完成ということはないわけですね。ところで、解体された材料つまり廃棄物はどうするんですか。
馬渕:  余り大きな声では云えませんけど、細かく切ってはそれぞれ指定ゴミの日に小分けにして出していました。
松村:  これくらいのお仕事になると、働きながらっていうわけには行かないでしょうね。土日だけの作業では2ヶ月では済まないでしょうから。
馬渕:  私みたいな何も仕事のない人でないとできないでしょうね。週末だけ作業しているDIYの仲間に、サラリーマン現役時代に山仲間達と3年かけてバンガローを建てたとか言うのがおりますが、内装なんかはまだ出来上がってないって言ってました。住まいは何年もかけてはいけませんからね。女房が逃げて行っちゃいますよ。
松村:  次は何をしようとされていますか。
馬渕:  実は台所を何とかいじりたいって考えているんですが、それをいうと女房はもうやめてくれっていいます。


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