はっきり申して、これが時代の先端でしょう
本シリーズ「ライフスタイルを見る視点」の第43回と「ライフスタイル考現行」の「コミュニティは経済価値を持ち得るか−コーポ江戸屋敷の実験」にご登場頂いた福岡の吉原勝己さん。その吉原さんが数年前から大注目していると仰っていた鹿児島のコミュニティ大工加藤潤さんたちの新しい動き。コロナ禍が続いていたため、東京にいてオンラインでお話を伺ったことはありましたが、なかなかそこまではピンと来ずにいた私が、吉原さんの引率で初めて加藤さんのところに伺い、有木さんともお会いする機会を得たのは、2022年。その時の感動が忘れられず、気付くと今回が3回目の訪問となりました。
加藤さんや有木さんたちの活動の面白さや新しさは、やはり鹿児島の地に来てみて、人々に会って、そして現場を訪ねてみないとわかりませんし、逆に来て会って訪ねてみると、誰でも感じるものがあるはずだと思います。私は、空き家の再生がこんなにも楽しみながら、また参加するそれぞれの人の生き方と関係付きながら進められている、そういう現場が複数あることに驚かされていますし、昨日まで電動工具に触れたこともなかった人たちを笑顔で迎え入れながら進められる建築工事があることを知り、建築行為と人との本来の関係に思いを致さずにいられなくなります。加藤さんや有木さんの現場に触れると、今の日本の普通の建築行為と人の関係が、あまりにも間接的で、どこか他人任せで、ビジネス的な性格を帯びすぎているという、いわば当然の認識に至ります。当然の認識なのですが、普段の私たちは今日の普通に慣れ過ぎてしまって、そこに辿り着けなくなっているのだと思います。
加藤さんや有木さん、コミュニティ大工とその仲間の方々の活動には、ここからもう一度考え直そう、ここからもう一度組立て直そうという気持ちを起こさせる未来があります。はっきり申して、これが時代の先端でしょう。
(松村秀一)
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